矯正に興味はあってもお金がない場合、治療に果たしてどれくらいかかるか、お金がなくても矯正する方法はないかなど気になる方は多いのではないでしょうか。矯正治療の費用感、お金がなくても矯正できるかどうか、なぜ早く矯正治療を行った方が良いのかについて詳しくご紹介いたします。
目次
矯正治療ってどれくらいかかる?
矯正治療は、保険適用外の自由診療に該当します。そのため、費用は、矯正の種類や装置、治療期間や難易度や地域差などによって大きく異なります。一般的な自費診療のおおよその費用をお伝えします。
1. 小児矯正の費用
乳歯〜混合歯列期の1期治療は、6歳臼歯と呼ばれる一番奥の歯が生え始めた頃から全て永久歯に生え変わるまでの時期です。約6歳から12歳頃までの治療で、顎の成長誘導及び永久歯の生えるスペースの確保などを目的とします。費用相場としては、約30万から50万円前後でしょう。拡大床や、マウスピース型矯正装置、プレオルソなどあり、どのような歯並びのトラブル(不正咬合)が起きているかによって使う装置も様々です。
永久歯が生え揃ってからの2期治療に移行する際は、成人の矯正と同じ装置を使い、別途費用がかかることが多いです。
2. 成人矯正の費用
永久歯が生え揃っていれば、成人矯正となります。歯並びの噛み合わせ改善や審美性の向上を目的として行います。
ワイヤー矯正
ブラケットとワイヤーを唇側につける場合は表側矯正、舌側につける場合は裏側矯正と呼ばれます。当院の場合は、表側矯正のワイヤーを白色にして目立たないホワイトワイヤー矯正もあります。ほとんどの症例に対応でき、歯の動きについては確実性が高いです。
表側矯正
表側矯正の費用感は、60万円から100万円前後です。装置が見えるというデメリットはありますが、費用は抑えめで設定されています。
ホワイトワイヤー矯正(審美矯正)
ホワイトワイヤー矯正の費用感は、70万円から110万円前後です。遠目には矯正中と分かりにくくなっていますが、近くでは装置が見え、費用は表側矯正より高めです。
裏側矯正(舌側矯正・リンガル矯正)
裏側矯正の費用感は、100万円から160万円前後です。大きくお口を開けない限り装置が見えにくいのがメリットですが、費用が高く、表側矯正に比べてブラケット間の距離が短いことから、難易度の高い治療法です。
上の歯を裏側矯正にして、下の歯を表側矯正にするハーフリンガルという治療法もあります。ハーフフリンガル矯正の費用感は、90万円から120万円前後です。
マウスピース矯正(インビザライン・スマーティーなど)
マウスピース矯正の費用感は、費用相場80万円から110万円前後です。ワイヤー矯正と異なる点は透明で見えにくく、患者さん自身で着脱が可能で好きなものを食べられますが、装着時間が短いと歯は動きづらいです。
全体を動かさず、気になる歯のみ動かす部分矯正(MTM)という治療法があります。部分矯正の費用感は、10万円から40万円前後です。軽度の症例や見た目の調整に限定され、全体の噛み合わせなどを改善することができないが、比較的始めやすい料金設定です。
3. 外科矯正(顎変形症を伴う治療)
矯正治療で保険適用になるケースは、先天性の疾患や顎変形症と認定され、国の指定を受けた医療機関(顎口腔機能診断施設)のみです。自己負担額は保険3割負担ですが、指定の総合病院などで治療を受ける必要があり、治療期間が長くかかることがあります。
費用の内訳や支払い方法について
費用の内訳や支払い方法などについてもお伝えしますが、あくまで目安とお考え下さい。
費用の内訳
- 初診相談料は0~5,000円(初診無料カウンセリングの医院も多い)
- 精密検査や診断料は2万~5万円(レントゲン・写真・歯型・CTなど)
- 矯正基本料金は20万~130万円(全体か部分か、装置の種類により大きく異なる)
- 毎月の調整料は3,000~6,000円/月(通院ごとにかかるケースあり)
- 保定装置(リテーナー)は1万~5万円(歯を並べた後動かないよう固定する装置)
- 再診料やリテーナー調整は数千円程度/回(保定期間中も定期通院が必要)
分割払いやローンについて
ほとんどの歯科医院では、クレジットカード決済や医療ローンが使えます。デンタルローンや院内での分割支払い(手数料なし)に対応している矯正歯科か確認しましょう。ちなみに、当院の場合は、月々2,000円〜10,000円程度で治療できます。
医療費控除について
年間10万円以上の医療費(家族全体で合算)がかかった場合、所得税の一部が還付される制度が医療費控除です。歯科矯正も咬合機能の改善を目的とした治療であれば対象となります。ただし、歯を綺麗にするなどの美容目的の矯正は対象外ですのでご注意ください。
お金がないけど矯正する方法は?
成人した学生でも費用を抑えて矯正をする方法はいくつか存在します。矯正は高額な治療ですが、工夫次第で現実的な選択肢を見つけることができます。
成人した学生が矯正をする方法
金銭的に厳しい状況でも矯正を検討できる方法を詳しくご紹介しましょう。
①分割払いをする
デンタルローンは分割期間が長くなるほど手数料や金利が発生するため、少し余裕があれば院内分割を選択しましょう。当院の場合は20回分割ならば手数料ゼロです。ただし、支払い能力やライフプランを事前に確認しておく必要があります。
② 前歯のみなどの部分矯正を選ぶ
全体的に矯正を行うよりも費用がぐっと抑えられます。軽度の歯並びの乱れ(前歯1本のがたつき・すき間・ねじれ)であることと、噛み合わせや骨格に大きな問題がないことが条件です。治療費が安く治療期間が3ヶ月から1年程度と短いですが、見た目を整えたい人向けであり、噛み合わせや根本的な歯列改善は難しく、一部だけ治すとバランスが悪くなることもあります。
③ モニター矯正を探す
一部の矯正歯科では、モニター募集(治療写真の提供などで割引)を行っていることがあります。治療中の写真や動画の提供に同意したり、医院のHPやSNSに顔出しOK(匿名・顔出しなしの医院もあり)であったり、院長の指導のもとで若手ドクターが治療を行うことが多いです。費用が相場より安いのがメリットですが、対象人数の制限、治療期間や方法に一定の条件を設けているケースがあります。
④ 大学病院で治療を受ける
大学の歯学部附属病院などでは、比較的安い料金で矯正治療を提供していることがあります。指導医のもとで若手歯科医師が行う治療で診断料や処置料が一般の開業医より安い傾向はあるが、大学病院は予約が取りづらく、治療期間が開業医よりもやや長くなり、症例収集の対象になることがあります。
⑤ 外科矯正(顎変形症)で保険適用になる
口ゴボや受け口など、骨格的な重度の不正咬合がある場合には、矯正治療が健康保険の適用になる可能性があります。顎変形症と診断され、保険適用の認定を受けた医療機関で治療していて顎の手術を伴う矯正治療が必要と診断されたケースです。3割負担の金額で治療が可能であるが、一定の審査や手術が必要で、誰でも適用になるわけではありません。
⑥ 医療費控除で一部還付を受ける
1年間で10万円以上の医療費を支払った場合、確定申告をすれば所得税の一部が戻ってきます。どのような目的か、健康増進か美容目的かという点で還付が受けられるか変わります。通院のための交通費や検査費も含めて申請しましょう。
未成年でお金があったら矯正可能?
反対に、未成年でお金があるから治療可能かご説明します。未成年の矯正治療は可能で、むしろ、小中高生のうちに始めた方が良いケースも多いです。矯正治療は見た目だけでなく、噛み合わせ、発音、成長の誘導、虫歯予防、顔立ちのバランス改善にも関わります。
未成年は親の同意が絶対に必要!
たとえ自分で治療費を支払えるとしても、未成年の場合は必ず必要なものがあります。
- 保護者の同意書
- 契約書の署名(親権者)
- 初診カウンセリング時の保護者の来院
自分でお金を出せても、親の協力がいるポイント
これは、法律的な責任の観点、医療安全上の観点からも当然の対応です。なぜ保護者の同意が必要かというと、治療内容やリスクについて十分な説明責任を果たさなければならず、支払い契約が発生する可能性があることや、通院管理や装置の使い方や食事制限などに大人のサポートが必要なためであります。仮に未成年でバイトや貯金などから矯正費用を用意できても、診療契約は成人が行う必要あり、初診時や説明時は同席を求められます。デンタルローンを使う場合は成人保証人が必要で、装置の管理や食事の注意点などもきちんと知っておかねばなりません。
自費で払えるならどんな矯正も選べる?
矯正治療にはさまざまな種類がありますが、費用さえ支払えれば、未成年でもほとんどの治療法が選択可能ですが、外科矯正という手術を伴う治療は、骨の成長が止まってからしか行えません。
まとまったお金がないけど矯正した方がいい理由は?
矯正治療は単なる見た目の改善ではなく、歯と体全体の健康を守るための医療行為です。そのため、お金が厳しくても、必要性のある人は矯正を前向きに考える価値があります。
①放置すると、歯と体に悪影響がある
噛み合わせや歯列の乱れをそのままにすると、虫歯や歯周病や顎関節症のリスク増加、発音障害や滑舌の悪さ、消化器官への負担、口呼吸や睡眠の質の低下を常時招くことになります。
②見た目のコンプレックスが人生に影響することもある
人前で笑えず写真が嫌いになり、面接や接客などの他者とのやりとりに自信が持てなかったり、口元のコンプレックスに繋がることがあります。このような口元コンプレックスは、自己肯定感の低下や社会的行動の制限になったり、見た目の印象は人間関係や第一印象、恋愛や仕事の場面にも影響します。
③若いうちに矯正した方が早く楽に安く済む
成長期に合わせた矯正をすれば顎の成長をコントロールでき、若いほど歯の動きが早く治療期間が短いものです。治療内容が軽く済むため総費用も抑えやすい傾向にあります。逆に、年齢を重ねてからの矯正は抜歯や外科矯正が必要になり、費用も期間も増える傾向があります。
④矯正は一生モノの自己投資
矯正治療は総額で見ると高い費用が掛かりますが、並んだ歯をきちんと保定すればその効果は一生続きます。
- 虫歯や歯周病のリスクを下げ生涯にかかる歯科費用を減らせる
- 自信を持って笑える口元になれる
- 健康的な噛み合わせで、体のバランスや内臓機能を保つ
- 歯を長く残せることで高齢期の生活の質が向上する
費用だけで矯正歯科を選ばないようにしよう
患者さんに合った矯正治療を行うには、顔のバランスや骨格分析、歯と顎の咬合関係、舌や口腔筋の動きのチェックをしなければなりません。安すぎる医院では、これらの検査が簡略化されていたりするため、動かすべき歯を間違えたり、抜歯の必要を見誤るなど、治療の質が著しく低下する可能性があります。安さ重視の医院では経験や実績が少なく、歯科医師の矯正専門の知識が浅いことがあります。複雑な症例に対応できなかったり、治療中にトラブルが起きたときにフォローできないリスクがあるので注意しましょう。
治療後のフォローもしてくれる医院を選ぼう
矯正治療は歯を動かして並べて終わりではなく、治療後の保定(リテーナー)や噛み合わせチェック、後戻り防止が極めて重要です。費用重視で設備や人員の余裕がない医院では、保定装置が合っていないのに放置されたり、後戻りが起きても追加費用で対応されることもあります。
取り返しのつかないダメージを負わないよう注意
間違った矯正治療をしてしまうと取り返しのつかないダメージを負う可能性もあります。再治療すると費用も時間もさらにかかるので、信頼できる矯正歯科を選ばなければなりません。
- あごが痛くて音が鳴り口が開かない顎関節症
- 噛み合わせがズレて食事や発音に影響する咬合崩壊
- 歯の根が短くなり寿命が縮む歯根吸収
- 歯ぐきが下がる歯肉退縮
どうやって信頼できる矯正歯科を選ぶ?
信頼できる医院を選ぶポイントについて挙げていきましょう。
- 経験や知識の証明になる矯正専門医か認定医がいること
- 診断の正確さにつながる精密検査があること
- 不透明な追加費用がないか総額が明確であること
- 口コミや信頼できる症例実績が公開されていること
- 長期的に歯並びを守れるかに繋がる保定やアフターフォローもなされていること
まとめ
矯正治療は、値段ももちろん大切ですが、信頼できる歯科医師選びが最優先です。多くの矯正歯科では初回相談が無料なので、複数の医院で話を聞いて医院を比較するのが賢い選び方です。価格だけでなく、説明の丁寧さや信頼できそうかどうか、設備や症例の多さなどを見て、自分に合った歯科医院を選びましょう。