歯周病に効く食べ物と聞いてすぐに浮かぶ食品はありますか。今日は、歯周病の予防になる食品など詳しくご紹介いたします。
歯周病とはどんな病気
朝、口の中がネバついたり、フロスを通した際にニオイがつくなどの小さな違和感があれば、それは歯周病のサインかもしれません。歯を支える組織で歯周病菌による炎症が起きて破壊されていく病気です。歯周病は、歯や歯の周囲にある歯茎をじわじわ攻めて静かに進行していくため、サイレントキラーと呼ばれます。歯そのものではなく、土台部分の歯茎や骨がじわじわダメージを受けるため、初期の段階では気づきにくいのが特徴です。
原因は細菌＋免疫力の低下
人間の口の中には常に細菌が存在しています。歯垢（プラーク）と呼ばれる細菌の塊が歯周組織に付着すると、歯ぐきの炎症を引き起こします。ただし、すべての人が歯周病になるわけではなく、体の免疫が働いている限り、ある程度は歯周病の進行が抑えられます。歯周病は常在している細菌以外に、食生活やストレス、睡眠不足などの生活習慣が絡むことで、バランスが崩れて起こりやすくなるのです。
歯周病の進行段階
歯周病の進行具合を初期、中期、重度に分けてご説明します。
- 初期：歯茎が赤く腫れる・歯磨きで歯茎から血が出る
- 中期：歯ぐきが下がり歯が長く見える・口臭が気になる
- 重度：歯がグラグラとしている・噛むと痛い・最終的に歯が抜ける
放置すると沈黙の病が牙をむくことや、痛みがないまま進行するのが歯周病の最も怖い特徴です。気がついた頃には、もう歯を支える顎の骨が溶けてしまっていたというケースも少なくありません。また恐ろしいのは、歯周病が口の中だけの問題ではないということです。
歯周病が全身に与える影響
歯周病が進行して重度になると、歯周病による炎症から毒性物質が生じ、血管内に歯周病菌が侵入します。その状態を歯原性菌血症と呼び、血管内膜に沈着してこぶのようなものが蓄積します。おかゆのような沈着物をアテロームプラークと呼び、そのこぶが原因で血管の流れが悪くなると、下記のような全身疾患となります。
- 動脈硬化・心筋梗塞が起きやすくなるリスク
- 糖尿病の悪化
- 早産や低体重児出産のリスク
- 誤嚥性肺炎の誘発
お口の病気で終わらないのが歯周病の怖さであるため、早期発見と早期対策、そして予防的な生活習慣が極めて大切なのです。歯を支える骨や歯茎が壊れていく慢性炎症ではありますが、初期症状に気づきにくく、放置すると天然歯が抜けてしまうことになります。
食事と歯周病の関係とは
食べ物と歯周病に関係あるのかと感じる方もいるかもしれませんが、実は私たちが毎日口にするものが、歯周病の予防もしくは悪化のカギを握っています。歯周病の本質は炎症なので、その炎症がどれほど広がるか、どれだけ抑えられるかは、体の免疫システムと密接に関わっています。免疫力を日々支えているのが食事であるため、栄養の偏りは免疫力の低下を招きます。
- 甘い物や脂っこい物ばかり食べる
- 野菜をほとんど食べない
- 外食中心で栄養が偏っている
- 朝食を抜いて血糖値の変動が大きい
食事と歯周病の悪循環
- 栄養不足になる
- 免疫力が低下する
- 炎症に弱くなる
- 歯周病が進行する
- 痛みや出血で咀嚼を減らす
- 噛みやすい食材に偏る
- さらに栄養が不足し歯周病が悪化する
歯周病の予防ができる食品・抑える食品
歯周病対策の基本は歯磨きと歯科治療ですが、何を食べるかもお口の健康に直結しています。歯ぐきの炎症を抑えたり、組織の修復を助けたりする栄養素と、それを含むおすすめの食材を紹介します。
歯周病に効くとされる栄養素と食材
歯周病に効く栄養素と食材をご紹介します。
ビタミンC
炎症を抑え、歯茎の歯ぐきの組織を作るコラーゲンの生成に必要不可欠な栄養素です。ビタミンCが不足すると、歯ぐきが出血しやすくなり、回復も遅くなります。赤ピーマン、ブロッコリーいちご、キウイ、柑橘類、芋類にも抗酸化成分があります。野菜はなるべく生のままか、蒸し調理にすると、ビタミンCを逃しにくくなります。
カルシウム
歯を支える骨や歯のセメント質の材料になる栄養素です。カルシウムが不足すると歯槽骨が弱くなってしまい、歯がぐらつきやすくなります。ししゃも、いりこ、煮干し、牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品、木綿豆腐、小松菜、ひじきに含まれます。カルシウムはビタミンDと一緒に摂ると吸収率が上がるため、魚介類と一緒に食べたり、日光浴をしておきましょう。
ポリフェノール
ポリフェノールは、抗酸化作用と抗菌作用を持つ植物由来の成分です。歯周病の原因菌に直接作用し、歯茎の炎症を和らげる効果が報告されています。ポリフェノールの一種のカテキンが豊富な緑茶、適量である赤ワイン、ブルーベリー、ぶどう、紫キャベツ、ナスなどの色の濃い野菜や果物に含まれます。カテキンは口臭予防になるため、緑茶でうがいするのも効果的です。
その他に炎症を抑える食品
- 発酵食品（ヨーグルト・納豆）で腸内環境を整える
- 青魚のDHA（ドコサヘキサエン酸）やEPA（エイコサペンタエン酸）で抗炎症作用がある
アーモンドや玄米、海藻類はカルシウムの代謝を支えるマグネシウムがあります。肉、魚、大豆製品にある歯茎や骨の再生材料になるたんぱく質は、多く含まれます。これらの栄養素は、単独で摂取するよりもバランスよく摂取することで最大の効果を発揮します。また、歯周病になると痛いから柔らかい物ばかりとなりがちですが、噛むこと自体が歯茎への刺激となり、血液の流れを良くします。ごぼうやレンコンなどの根菜類などを料理に入れてよく噛むことで唾液の分泌も促進され、細菌の増殖も抑えられるでしょう。
歯周病の歯茎を悪化させやすい食品
ここでは、歯周病リスクを高める食べ物と、その理由をわかりやすく紹介します。食べてはいけないわけではありませんが、頻度と食べ方のコントロールがカギになります。これらは血糖の急上昇や慢性炎症を引き起こし、免疫のバランスを崩す原因になります。
糖分の多い食品
虫歯の原因として有名な砂糖ですが、歯周病の原因菌にとって好物です。
- チョコレート、グミ、飴などのお菓子
- ケーキ、ジュース、スポーツドリンク
- 菓子パン、アイスクリーム
糖分はプラーク内の細菌に分解され、酸や毒素を放出して歯ぐきを攻撃します。また、粘着性の高いお菓子ほど、長時間歯に残りやすくリスク増大です。どうしても食べたい時は、食後にすぐ歯磨きしましょう。
加工食品・高脂肪食
ファストフードや加工肉、スナック菓子、マーガリン、ファストフードなどに多く含まれるトランス脂肪酸・飽和脂肪酸は、体内の慢性炎症を悪化させることで知られています。
- ポテト、唐揚げなどの揚げ物や脂身
- ソーセージ、ベーコンなどの加工肉
- 市販のドレッシングやマーガリン類
これらの食品は、腸内環境にも悪影響を与え、結果的に免疫のバランスを崩す引き金になります。さらに、食べすぎによって肥満傾向になると、歯周病のリスクが倍増します。
粘着性の高い食べ物
歯にくっつきやすいため、どうしても虫歯や歯周病などの細菌感染が起きやすいです。健康に良さそうな食品でも、食べたあと歯に残りやすい食べ物は注意が必要です。
- レーズン、干し芋などのドライレーズン
- グラノーラ、シリアル
- 海苔、もちなどの粘性食品
こうした食品は歯と歯の隙間や溝に詰まりやすく、見えない場所で細菌感染をスタートさせてしまいます。おやつの代替えとして、ナッツ類やするめ、無糖ヨーグルトなどがおすすめです。
炭酸飲料や酸性飲料
炭酸やスポーツドリンク、酢の強い飲み物などは、酸性度が高いことから、歯の表面（エナメル質）を溶かします。その結果、歯がしみてしまったり、細菌が侵入しやすくなったり、歯茎にも炎症が波及するケースも少なくありません。だらだら飲まず飲むなら一気に飲み、ストローを使って、歯への接触を減らすことも一つの方法です。また、飲んだ後は水で口をゆすぐのも効果的です。
絶対に食べてはダメな食品はなく、大切なのは摂取バランスと食後のケアです。チョコレートを1粒食べたから歯周病になるわけではありませんし、スナック菓子を一袋食べてもその後きちんと歯磨きをすれば問題ありません。リスクのある食品を知っておけば、選び方や対策も自然と変わってきます。
歯周病の進行を止めるには
歯周病の進行を止めるには、歯ぐきの中に潜んでいる細菌の除去が不可欠です。そのためには、歯科で行う治療と患者さんご自身で行うケアが並行して必要になります。
歯科での処置
- 歯石除去（スケーリング）
- 歯周ポケットの洗浄
- 進行が進んでいればフラップ手術などの外科的処置
- 定期的なメンテナンス
自宅でのケア
- 正しい歯磨き
- 就寝前にはデンタルフロスや歯間ブラシの活用
- 栄養バランスの取れた食事
治療しても、食生活が乱れていれば炎症は再発します。逆に、どれだけ食事に気をつけても、歯垢が溜まったままなら歯周病は進行します。歯がグラついてきたり、噛むと痛いなどの自覚症状が出てからでは遅いです。だからこそ、食事は毎日の予防、歯医者は診断と治療の拠点と捉え、早期受診＋毎日の意識改善の両方を大切にしてください。
まとめ
食べ物は歯ぐきなどの歯周組織を強くし、炎症に打ち勝つ土台を作ります。歯科治療はリセットと再発予防がとても大切です。つまり、食事のみに気を付けていても、治療のみに気を付けてもだめです。いずれもバランスを取って気を付けることが、歯周病を本当に遠ざける方法なのです。
医療法人真摯会
