歯周病

歯周病はどこまで進行したら抜歯になる?その判断基準と予防のポイント

歯周病はどこまで進行したら抜歯になる?

「最近、歯がグラグラしてきた」
「歯ぐきが下がってきた気がする」
そんな違和感を覚えたとき、多くの方が心配するのが『この歯、抜かないといけないのでは?』という不安です。

実は歯周病は、初期にはほとんど自覚症状がないまま進行し、重度になると抜歯が必要になる病気です。では、どの時点で抜歯の判断が下されるのでしょうか?

結論からお伝えすると、

歯を支える骨(歯槽骨)が歯の根の半分以上失われたり、歯が強く動揺するほど重度に進行した場合、抜歯の判断がされることがあります。

しかし、その手前で治療を開始すれば、歯を残せる可能性は十分にあります。

「歯周病がどこまで進行すると抜歯になるのか?」という疑問に対して、進行度ごとの判断基準や、抜歯を防ぐための予防策、さらには抜歯後の治療選択肢まで、患者さんの不安に寄り添ってわかりやすく解説していきます。

重度まで進行した歯周病では抜歯が必要になることもあります

進行すると抜歯が必要になることもある

歯周病は進行性の病気で、放っておくと最終的に歯を失う原因になります。特に歯を支える骨が大きく破壊されると、抜歯以外の選択肢がなくなる場合もあります。早期に対処すれば回避できる可能性があります。

歯周病が重度になると、抜歯が必要になるケースがあります。

その理由は、歯を支える骨が大きく失われると、歯の保存が難しくなるため

骨が失われると保存が難しくなる

歯周病は歯ぐきだけでなく、歯を支える骨(歯槽骨)を徐々に破壊します。骨の吸収が進むと、歯のグラつきや機能不全が起こり、抜歯せざるを得ない状態になります。

歯槽骨が失われると、歯を維持することが難しくなります。

歯周病が進行すると以下のような現象が起きます。

  1. 歯ぐきの腫れや出血
  2. 歯周ポケットの深さが増す
  3. 歯槽骨の吸収(骨の減少)
  4. 歯の動揺(グラグラになる)

これらの状態が重なると、いくら治療しても歯を固定することが難しくなり、抜歯が選択されることになります。歯の寿命を守るには、「骨がどれだけ残っているか」が大きな判断材料になります。

進行度別に見る抜歯の判断ポイント

歯周病は進行段階によって症状や治療の選択肢が異なります。初期〜中等度では治療で歯を保存できる可能性が高いですが、重度になると抜歯の必要性が高まります。進行度ごとの違いを表で整理します。

歯周病の進行段階により、抜歯の可能性は変わります。

歯周病の進行度と抜歯の可能性

歯周病の進行度によって、抜歯が必要かどうかの判断が異なります。

歯周病の進行度 主な症状 歯槽骨の状態 歯の動揺 抜歯の可能性
初期(軽度) 歯ぐきの出血、軽い腫れ ほとんど吸収なし なし ほぼなし(治療で改善)
中等度 歯周ポケットの深まり、軽度のグラつき 部分的に骨が吸収 わずかに動揺あり 低い(治療で保存可能)
重度 歯ぐきの下がり、歯のぐらつき、口臭 歯根の半分以上の骨が吸収 強い動揺 高い(保存困難で抜歯対象)

以下に進行度別の特徴をまとめます。

初期(軽度歯周病)

  • 歯ぐきの腫れや出血がある
  • 歯槽骨の吸収はごくわずか
  • 歯の動揺なし

抜歯は不要。歯磨き指導やスケーリングで改善可能。

中等度歯周病

  • 歯周ポケットが深くなる(4~6mm程度)
  • 骨の吸収が進み始める
  • 軽度の動揺あり

抜歯はまだ不要。治療で歯の保存が可能なケースも多い。

重度歯周病

  • 歯周ポケットが6mm以上
  • 歯槽骨の吸収が進行し、歯の根の半分以上が露出
  • 歯の動揺が著しい(グラグラ)

保存が困難と判断されれば、抜歯となる可能性が高い。

このように、歯周病は進行度によって治療方法も変わり、重度になると抜歯が視野に入ってくることがわかります。

出典元:歯周病Q&A(日本歯周病学会)

抜歯を防ぐためにできる日常ケアと定期健診

日々の正しい歯磨きや生活習慣の改善、定期的な歯科健診により、歯周病の進行を防ぎ、抜歯を回避できる可能性が高まります。自宅でのケアと歯科医院での予防管理を両立することが大切です。

抜歯を防ぐためには、早期の対策と継続的なケアが大切です。

以下のポイントを日常的に意識しましょう。

  1. 寧な歯磨き習慣
    → 毎食後の歯磨きと、1日1回はデンタルフロスや歯間ブラシを使って歯垢を除去します。
  2. バランスのとれた食生活
    → 栄養不足や糖分過多は歯周病を悪化させる要因になります。
  3. 禁煙の徹底
    → 喫煙は歯周病の進行を早め、治療効果を下げることがわかっています。
  4. 歯科医院での定期的な健診とクリーニング
    → 歯石除去や歯周ポケットのチェックにより、早期発見と進行防止が可能になります。

このように、歯周病を重症化させないためには、日々のケアと歯科医院でのプロフェッショナルケアの両立が不可欠です。

まとめ

早期発見・早期治療で大切な歯を守ろう

歯周病は重症化するまで自覚しにくいため、定期的なチェックと早めの対処が抜歯を防ぐカギになります。

  1. 歯周病が進行すると、歯の支持組織が破壊されて抜歯が必要になることがある
  2. 進行度に応じた治療が可能なので、早期発見が重要
  3. 歯磨きや健診による予防で、抜歯を回避できる可能性が高くなる

「歯がグラグラする」「歯ぐきから血が出る」などのサインがあれば、すぐに歯科医院を受診し、重症化を防ぎましょう。大切な歯を守る第一歩は、“気づくこと”と“行動すること”です。

この記事の監修者

医療法人真摯会
西宮クローバー歯科・矯正歯科 院長
廣石 勝也
朝日大学歯学部卒業。大阪歯科大学総合診療科臨床研修終了。国際口腔インプラント学会会員。

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