歯と口のトラブル

食いしばりが歯に与えるダメージと対策とは

食いしばりが歯に与えるダメージと対策とは

無意識の「食いしばり」が引き起こす問題とは?

朝起きたときに「あごがだるい」「歯がなんとなく痛い」と感じたことはありませんか?それ、もしかすると「食いしばり」が原因かもしれません。

食いしばりは、起きているときはもちろん、睡眠中に無意識に行っているケースも多く、気づかないうちに歯やあごに大きな負担をかけています。とくに現代人はストレスの影響で、日常的に食いしばってしまう傾向が強いといわれています。

歯に与えるダメージの具体例

歯に与えるダメージの具体例

食いしばりによるダメージは思っている以上に多岐にわたります。主に以下のような影響が考えられます。

歯のすり減り(咬耗)
→ 強い力で上下の歯がこすれ合い、エナメル質が削れてしまいます。放置すると象牙質が露出し、知覚過敏の原因になります。

ヒビ割れ・破折
→ 健康な歯でも繰り返される強い力でヒビが入ったり、欠けたりするリスクが高まります。被せ物や詰め物が取れやすくなる原因にもなります。

顎関節症のリスク
→ あごに過剰な負荷がかかることで、顎関節症を引き起こすことがあります。口を開けにくい、カクカク音がする、痛みがあるなどの症状が現れます。

歯周組織への影響
→ 歯の根元に力が集中すると、歯ぐきが下がったり、歯がグラグラしやすくなったりします。歯周病が進行する要因にもなりえます。

これらの症状は、どれも歯の寿命を縮める原因となりうる深刻なダメージです。

こんな症状があれば要注意!チェックリスト

こんな症状があれば要注意

ご自身の状態を以下の項目でチェックしてみてください。

□ 朝起きたとき、あごが疲れている・だるい

□ 歯の先端が平らにすり減っている

□ 頭痛や肩こりが慢性的にある

□ 被せ物や詰め物がよく外れる

□ 知覚過敏がある

□ 頬の内側や舌に噛み跡がある

ひとつでも当てはまる場合、食いしばりの可能性ありです。特に寝ている間の食いしばりは自覚しづらいため、歯科でのチェックが大切になります。

なぜ食いしばってしまうの?主な原因

食いしばりは習慣的・心理的な要素が大きく関係しています。

ストレスや緊張
→ 精神的なプレッシャーが筋肉に力を入れる癖を生みます。日中も無意識に歯をグッと噛みしめていることがあります。

集中時のクセ
→ パソコン作業やスマホの操作中に、無意識に食いしばる方も多いです。

睡眠中の歯ぎしり
→ 「食いしばり」と「歯ぎしり」は別物ですが、どちらも就寝中の無意識の動作で、歯に強い力を加えます。

不正咬合や噛み合わせのずれ
→ 噛み合わせが悪いと、一部の歯に過度な力がかかり、無意識に力を逃がすために食いしばることがあります。

これらの原因が複合して、歯や顎に大きなストレスをかけていることも少なくありません。

スマホの使用によって食いしばっている人が増加している?

なぜスマホと食いしばりが関係あるの?

スマホを使ってるとき、特に次のような姿勢になっていませんか?

  • 頭を前に突き出す
  • 首が下向きになる
  • 長時間、表情や口元がほぼ動かない

この姿勢が実は、あごの筋肉や首まわりに負担をかけて、無意識に食いしばる状態をつくりやすくしてるんです。

どんなときに食いしばりが起きやすい?

以下のような場面が要注意です。

SNSや動画を集中して見ているとき
→ 知らず知らずのうちに顔がこわばり、歯をグッと噛みしめている

スマホゲームに集中しているとき
→ 真剣になるほど力が入りやすい

長時間の作業(在宅ワークやチャットなど)
→ 姿勢が崩れて筋肉がこわばりやすくなる

増加傾向を示す調査も

例えば、日本歯科医師会や一部の大学病院のレポートでは、「スマホ使用時間が長い人ほど、食いしばりや顎関節症の訴えが多い」という報告も出ています。

対策はあるの?

スマホ使用による食いしばりを防ぐには、ちょっとした意識と習慣がポイントになります。

スマホ食いしばり対策

  1. 1時間に1回はスマホを置いて伸びをする
  2. スマホを見るときは画面を目線の高さに近づける
  3. 「今、食いしばってる?」と意識してあごをゆるめる
  4. リラックスできる時間(入浴や深呼吸)を意識的に取る

スマホ時間=「食いしばり注意タイム」でもある!

スマホは便利で手放せない存在。でも、「使い方次第」で体に負担をかけることもあります。今やスマホ姿勢と食いしばりの関係は現代病のひとつとも言えるかもしれません。

しかし、ちょっとした工夫で、あごと歯を守ることが出来ます。

歯を守るためにできる対策と治療法

食いしばりによるダメージを防ぐには、原因に合わせた対策が必要です。

正しい舌の位置をチェックする
→ 正しい舌の位置とは、上の前歯の裏側に舌の先端(舌尖)が触れた状態です。この位置に舌の先端を置くと、上下の歯の間が離れ、力を入れて食いしばることができなくなります。

マウスピース(ナイトガード)の使用
→ 就寝中の食いしばりを緩和する装置です。歯科医院でオーダーメイドで作ってもらうと、フィット感が良く、歯の保護効果が高まります。

ストレスマネジメント
→ 軽い運動、深呼吸、瞑想などで、日常的にストレスを解消する工夫をしましょう。

意識的な「リラックス」の習慣
→ 「歯を離す」「あごの力を抜く」を意識するだけでも、食いしばりを減らす第一歩になります。

噛み合わせの調整や矯正治療
→ 不正咬合が原因の場合、専門的な矯正治療が必要になることもあります。

定期的な歯科健診
→ 歯のすり減り具合や、被せ物・詰め物の状態などを定期的にチェックしてもらうことで、早期発見・早期対応が可能になります。

対策のポイントは、「食いしばりに気づいて対処すること」。放っておくとダメージは蓄積されてしまうので、早めのケアが大切です。

日中の食いしばりを防ぐには、正しい舌の位置が大切!

「えっ?舌の位置で食いしばりが防げるの?」って思った方、多いんじゃないかな。
実は舌の位置がズレていると、上下の歯が触れやすくなって無意識に食いしばりやすくなるんです。

正しい舌の位置(安静時のポジション)ってどこ?

以下のポイントをチェックしてみてね:

舌の先が上あごの「スポット」と呼ばれる位置(前歯の少し後ろのふくらみ)に触れている

舌全体が上あごにふわっとくっついている

唇は軽く閉じている

上下の歯は触れていない(1〜2mm程度のすき間があるのが理想)

なぜこれが大切かというと…

  • 舌が正しい位置にあると、自然とあごの力が抜ける
  • 歯が当たらなくなることで、無意識の食いしばりを予防できる
  • あごの筋肉がリラックスしやすくなるので、顎関節症のリスクも減らせる

舌のトレーニングで食いしばり対策!

簡単な習慣で、正しい舌の位置を身につけることができます。

鏡の前で舌を「スポット」に当てて10秒キープ×3回
→ 朝・昼・夜の習慣にするとGOOD!

「ポカーン口」や「口呼吸」をしていないか意識する
→ 鼻呼吸が基本です!

上下の歯が触れていない=リラックスしている証拠

日中ふとした時に、「今、歯と歯が当たってないかな?」と気づけることが大切です。

口元の正しいポジションを保つことが、食いしばり改善の第一歩となります。

まとめ

大事なのは「気づいて、守る」こと

食いしばりは、誰にでも起こりうる「見えないダメージの原因」です。でも、気づき、ケアを始めることで歯やあごの健康寿命をぐっと延ばすことができます。

  • 「あごがだるい」
  • 「歯が削れてきた気がする」
  • 「詰め物がよく外れる」

そんなサインを見逃さず、まずは歯科医院での健診を受けてみてくださいね。

この記事の監修者

医療法人真摯会
西宮クローバー歯科・矯正歯科 院長
廣石 勝也
朝日大学歯学部卒業。大阪歯科大学総合診療科臨床研修終了。国際口腔インプラント学会会員。

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