矯正歯科

矯正治療にはリスクはあるの?安全に進めるために知っておきたいポイント

矯正治療にはリスクはあるの?安全に進めるために知っておきたいポイント

西宮クローバー歯科・矯正歯科 歯科医師 廣石 勝也

矯正治療にはリスクはあるの?

はい、あります。ただし多くは防ぐことが出来ます。
矯正治療は、見た目の改善だけでなく、かみ合わせの改善や将来的なむし歯・歯周病の予防にもつながる大きなメリットがあります。しかし、どんな医療行為にも一定のリスクは伴います。矯正治療も例外ではなく、治療中の痛みや歯ぐきのトラブル、むし歯リスクの上昇、治療期間の延長など、いくつかの注意点があります。

しかし、心配しすぎる必要はありません。矯正治療で起こり得るリスクの大部分は、正しいケアと通院、理解のある行動によってしっかりとコントロールできます。むしろ、リスクを知らないまま治療を始める方が問題。知らずに進めてしまうと、対処が遅れたり、不安が大きくなったりしてしまいます。

この記事はこんな方に向いています

  • 矯正を始めたいが、リスクがどれくらいあるのか心配
  • 痛みやトラブルが発生しないか不安
  • 情報が多すぎて何を信じれば良いのかわからない
  • 子どもの矯正を検討していて、安全性を押さえたい
  • 信頼できる判断軸が欲しい

この記事を読むとわかること

  1. 矯正治療で起こり得る主なリスクの種類
  2. なぜそのリスクが起こるのか、原因と仕組み
  3. 自分でできるリスク予防の具体策
  4. 医院選びで後悔しないためのポイント
  5. 治療成功率を高める考え方

 

矯正治療にリスクはあるの?どんなことが起こりやすい?

矯正治療にはメリットが多い一方で、治療中の痛み、むし歯や歯周トラブル、歯根の変化、治療期間の延長、装置の不具合など、いくつかのリスクが存在する。ただし多くは専門的な管理と患者さん自身のセルフケアで予防が可能。

矯正治療には一定のリスクがあるが、多くは予防可能。

矯正治療は、歯を動かすという性質上、歯や歯ぐきに普段とは異なる力を加えます。そのため、以下のようなトラブルが発生する可能性があります。

起こりやすいリスク一覧と説明

  1. 痛みが出ることがある
    → 歯が動く際の圧力が原因で、調整後数日間は痛みを感じることがあります。
  2. むし歯や歯周病になりやすくなる
    → 装置の周囲に歯垢が溜まりやすく、歯磨きの難易度が上がるためリスクが高まります。
  3. 歯ぐきが腫れる、下がる可能性がある
    → 歯の移動に伴い歯ぐきの形態が変化する場合があります。
  4. 歯根が短くなる(歯根吸収)可能性がある
    → 動かす量が大きい場合や、個人の体質によりわずかに歯根が短くなることがあります。
  5. 装置が壊れる・外れることがある
    → 食事や扱い方によってパーツが外れたり破損することがあります。
  6. 治療期間が延びることがある
    → トラブルや患者さん側の協力度によって予定より遅れることがあります。

これらのトラブルは「起こる可能性がある」だけで、必ず起こるというわけではありません。むしろ、しっかりケアをして通院を守ることで、ほとんどがコントロール可能です。矯正治療を正しく理解し、準備しておくことがもっとも大切なことと言えます。

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歯が痛むのはなぜ?痛みのリスクはどれくらいある?

矯正で歯が痛むのは、歯が動く際に生じる圧力によるもので、多くの患者さんが経験する。痛みは通常2〜3日で落ち着き、対策も多い。心配する必要はない。

矯正の痛みはほとんどが一時的。

矯正治療で「痛いのが怖い」という声はよく聞きます。
ただし、一般的に感じる痛みは 歯が食事のときに押されると少し響く程度 のことが多いです。

痛みが生じる具体的な理由

  1. 歯が骨の中を移動する際に、周囲の組織に圧力がかかる
    → 歯は少しずつ動くため、動き始めの数日間は感覚が敏感になりやすい。
  2. ワイヤー調整やアライナー交換の直後は力が強くかかる
    → 調整の数時間後に痛みがピークになり、その後徐々に軽減する。
  3. かみ合わせの変化に身体が慣れていない
    → 食べ物を噛む際に違和感を感じやすくなる。

痛みを軽減する方法(丁寧な説明付き)

  1. 柔らかい食事を選ぶ
    → 炊いたおかゆ、うどん、スープなど、歯に負担をかけない食事が楽になります。
  2. 市販の鎮痛剤を活用する
    → 我慢せず、適切に使用することで快適に過ごせます。
  3. かみ合わせの負担を減らす習慣を意識する
    → 食いしばりや歯ぎしりが強いと痛みが増えるため、日中の歯のリラックスが大切です。

痛みは矯正の「歯が動いているサイン」。身体が順応すればほとんど感じなくなります。「怖い痛み」ではなく「治療過程で自然に起こる変化」ととらえることが大切です。

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むし歯や歯周病のリスクが上がるのは本当?

矯正中は装置が歯磨きの妨げになるため、歯垢が溜まりやすく、むし歯・歯周病のリスクが高まる。ただし適切な歯磨きと健診で予防が可能。

矯正中は歯垢が付きやすくむし歯リスクが上がる。

矯正治療中は装置が付くことで歯磨きが難しくなり、歯垢が残りやすくなります。

むし歯リスクが高まる理由

  1. 装置の周りに細かい隙間があり汚れが溜まりやすい
    → ワイヤーやブラケットは凹凸が多いため、清掃が難しくなります。
  2. 歯磨き時間が短いと磨き残しが増える
    → 普段より丁寧な清掃が必要になります。
  3. 歯ぐきの炎症につながると歯の動きにも影響
    → 歯周病が進行すると治療自体に悪影響が出ることがあります。

予防方法(しっかりした説明付き)

  1. 矯正専用の歯ブラシを使う
    → ブラケットの周りを細かく磨けるので磨き残しを減らせます。
  2. ワンタフトブラシで細かい部分を清掃
    → 装置の下や隙間の汚れをより確実に取り除けます。
  3. フロスや歯間ブラシの併用
    → 歯と歯の間の歯垢を丁寧に除去できます。
  4. 定期的な健診でプロのケアを受ける
    → セルフケアだけでは落としきれない汚れを予防できます。

矯正治療中のむし歯・歯周トラブルは「努力で防げるトラブル」。特に歯磨きの習慣が大きく影響します。予防意識が高い患者さんほど、治療結果も良くなります。

歯根吸収や歯ぐき退縮は起こるの?

歯の移動に伴い歯根がわずかに短くなる「歯根吸収」や、歯ぐきが少し下がる「歯ぐき退縮」が生じる場合があるが、多くは軽度で、専門家による管理で進行を防止できる。

歯根吸収・歯ぐき退縮は起こる可能性があるが管理で軽減できる。

主な原因

  1. 歯を大きく動かす場合
    → 動く距離が長いほど歯の根への負担が増えます。
  2. 元の歯ぐきが薄い場合
    → 骨や歯ぐきの厚みが少ないと、退縮が起こりやすくなります。
  3. 力のコントロールが適切でない場合
    → 無理な力がかかると組織に負担が増えます。

リスク軽減のための取り組み

  1. 定期的なレントゲン検査で歯根の状態を確認する
    → 変化を早期に察知できます。
  2. 負担の少ない治療計画を立てる
    → 歯を無理に動かさず、安全性を重視します。
  3. 歯ぐきが薄い場合は追加の処置を検討
    → 必要に応じて歯ぐきの移植などを行うこともあります。

歯根吸収や歯ぐき退縮は「起きる可能性がある」とされる項目ですが、実際には専門的な診断と治療計画で大幅にコントロールできます。信頼できる歯科医師と相談しながら慎重に進めることがもっとも重要です。

治療期間が延びるリスクはなぜ起こる?

装置の破損、予約遅延、患者さんの協力度などが影響し、治療期間が予定より長くなることがある。生活習慣と通院の丁寧さが期間を左右する。

治療期間の延長には複数の原因がある。

治療期間が延びる主な原因

  1. 装置の破損・紛失
    → 食生活や取り扱いが雑だと装置が壊れることがあります。
  2. 通院スケジュールの遅延
    → 調整時期が遅れると歯が効率よく動かなくなります。
  3. アライナーの装着時間不足(マウスピース矯正)
    → 装着時間が短いと治療が進みません。
  4. むし歯や歯周病が進行
    → 治療を中断しなければならない場合があります。

対策方法

  1. 装置を丁寧に扱う
    → 食事の選び方や外すときの力加減に注意します。
  2. 予約通院を守る
    → 調整が遅れると治療全体が延びるため、優先順位を高く設定します。
  3. 生活習慣を整える
    → アライナーなら装着時間を確保することが大切です。

治療期間は歯科医師だけでなく患者さん側の協力が大きく影響します。「治療を短くしたい」のなら、日々の行動と意識が重要なカギになります。

矯正治療後に後戻りするリスクはある?

矯正後にリテーナー(保定装置)を適切に使わないと、歯が元の位置に戻ろうとする後戻りが起きる。後戻りを防ぐには指示された期間の保定が欠かせない。

保定を怠ると後戻りは起きる。

歯は動いた後、元の位置に戻ろうとする性質があります。
そのため、矯正が終わっても 保定装置の管理がもっとも重要 になります。

後戻りが起きる理由

  1. 歯を支える組織が安定するまで時間が必要
    → 動いた歯の周囲組織は元の環境に戻ろうとするため、保定が必須です。
  2. 生活習慣の影響
    → 舌の癖、口呼吸、姿勢などの要因も関係します。
  3. 保定を怠ると歯の位置が不安定になる
    → 夜だけの装着でも忘れる日が続くと戻りやすくなります。

対策

  1. 保定装置を毎日使用する
    → 指示期間は必ず守りましょう。
  2. 定期的な健診を継続する
    → 経過観察が後戻り防止につながります。
  3. 悪習慣の改善
    → 舌の位置や口呼吸の改善で、歯列の安定度が変わります。

後戻りは「防げるリスク」です。保定の重要性を理解し、自分自身の生活習慣を見直すことで、きれいな歯並びを長く維持できます。

リスクを最小限にするにはどうしたらいい?

適切な清掃、正確な通院、生活習慣の見直し、信頼できる歯科医院選びがリスク軽減のカギになる。

正しいケアと医院選びがリスク予防の中心。

リスクを減らすための実践ポイント

  1. 丁寧な歯磨きを習慣化する
    → 歯垢をしっかり落とすことでむし歯・歯周病リスクを大幅に下げられます。
  2. 通院を継続する
    → 調整・確認が遅れるとトラブルが進行しやすくなります。
  3. 生活習慣を整える
    → 舌の癖や食習慣は治療結果に影響します。
  4. 治療説明を丁寧に行う医院を選ぶ
    → リスクを正確に伝えてくれる医院の方が安心感があります。
  5. 痛みや違和感を放置しない
    → 早めに相談することで大きなトラブルを予防できます。

リスクを最小限に抑えるためには「患者さんと歯科医師が同じ方向を見る」ことが欠かせません。お互いの役割を理解し、協力しながら進めることで安全性が高まり、満足度の高い治療を実現できます。

まとめ

リスクを理解してこそ、安全で満足度の高い矯正治療ができる

矯正治療には確かにいくつかのリスクがあります。しかし、その大部分は 「知っていれば防げるもの」 です。むしろ、リスクを知っているからこそ、自分の行動を変えたり、適切なケアを選ぶ判断ができるようになります。

  1. 痛み → 一時的で対策可能
  2. むし歯・歯周トラブル → 丁寧な歯磨きと健診で予防
  3. 歯根吸収・歯ぐき退縮 → 専門管理でリスク軽減
  4. 治療期間延長 → 通院管理と生活習慣で改善
  5. 後戻り → 保定を守れば予防できる

矯正治療は決して「危険なもの」ではありません。
正しい知識と適切な行動があれば、お嬢様の望む歯並びへ安全に近づくことができます。

関連ページ:西宮クローバー歯科・矯正歯科の矯正治療

この記事の監修者

医療法人真摯会
西宮クローバー歯科・矯正歯科 院長
廣石 勝也
朝日大学歯学部卒業。大阪歯科大学総合診療科臨床研修終了。国際口腔インプラント学会会員。

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