
歯医者に行きたくないと思われる方は、一定数おられます。ライオンが2022年に歯科検診に関する意識調査を行ったところ、一年に一回定期検診を受診している方は44%で半数以下でした。なぜ歯医者に行きたくないのか、行かないことで何が起きるか、克服するためにはどうすれば良いのかについて詳しくご紹介いたします。
歯医者に行きたくない理由
歯医者に行きたくない理由について、挙げていきましょう。
痛みへの恐怖
最も多い理由の一つが、痛いのが怖いという恐怖心です。麻酔をするために注射をするのが苦手であり、歯を削る音や痛みを想像して緊張して怖くなるなどがあります。
歯医者特有の音や匂いとチェアーの光が苦手
歯を削るドリル音や吸引音が嫌と感じたり、歯科医院独特の消毒薬や薬剤の匂いが苦手というケースです。また、診療チェアーに座った際、口腔内を見るために当てられる無影灯がまぶしくて嫌という方もおられます。これらの感覚的な不快さが強いストレスになり、歯医者に行きたくないという人もいます。
治療費への不安
治療費についてわかりやすい説明がなく、何回行けば治療が終わるのかも知らず、どれくらい費用がかかるかわからないというケースです。自由診療や長期治療は特に高額になるのではないかという心配もあり、費用面で二の足を踏む人が多いです。
時間が取れない
仕事や学校などの日常が忙しく、通院ができないケースです。通院回数が多く時間を調整するのが面倒になり、通い続けること自体が負担になってしまいます。
口の中を見せることへの抵抗感
虫歯や歯周病で汚れているお口の中を見られるのが恥ずかしいというケースです。口臭を気にしていて、たとえ歯医者であっても口を開けたくないなどの心理的ハードルが高い人もいます。
治療に対するコントロールの喪失感
椅子に横になり口を開けたまま動けないという状態が嫌というケースです。自分で治療を止めることができない不安や無防備な状態が苦手な方もおられます。
過去の嫌な経験
子どもの頃に怖い思いをするなどの過去の治療体験がトラウマになっているケースです。医師やスタッフとのコミュニケーションがうまくいかないと、年齢に関係なく無意識に行きたくないという感情に影響してしまいます。
歯医者へ行かないと起きるデメリット
歯医者へ行かないと起きるデメリットでまず浮かぶのは、口腔内の状態の悪化です。
虫歯や歯周病の悪化
初期の虫歯や歯周病は痛みがないまま進行してしまいます。放置するとエナメル質や象牙質のみではなく、神経(歯髄)まで感染が進み、強い痛みや腫れ、歯を保てない状態になることがあります。定期的に歯石除去やメンテナンスをしない状態では歯周病がどうしても進行するため、最終的には歯が抜け落ち、義歯治療が必要になってしまいます。
噛めない・食べられない
歯を失ったり、噛み合わせが悪化すると、食べ物がうまく噛めず、食事の楽しみが減少します。胃などの消化器官への負担がかかれば柔らかい食べ物しか食べられず、食生活の制限が増えてしまいます。
口臭や見た目の悪化
歯垢や歯石、むし歯、歯周病などが原因で強い口臭が発生します。口臭以外では、歯の色が着色や歯石で黄ばんだり、歯並びの乱れが起こってしまい、見た目の印象が悪くなります。
全身疾患のリスクが高まる
歯周病が重症化すると歯周病菌は血管へ入り込みます。菌が血流に乗ってしまうと、心臓病、糖尿病、脳梗塞、誤嚥性肺炎など全身の病気を引き起こすリスクがあります。
治療費が高額になる可能性
早期発見や治療ができなければ、重症化することから将来的に大がかりな治療が必要になります。大がかりな治療は費用が高くなり、通院期間も長引くケースが多いです。
生活の質(QOL)が低下する
食事、会話、笑顔など日常生活に支障が出てしまうと、どうしてもQOLが低下します。低下により患者さんの自信がなくなると、人に接するのが億劫になり、関わる楽しみが失われる原因になります。
歯医者に行けるようになる克服方法
歯医者に行くのが怖いと感じるのは珍しいことではありません。少しずつでも前に進めるようにサポートしてくれる医院を選ぶことが大切です。
1.怖さや不安を言葉にする
歯医者の何が怖いのかを具体的にしてみましょう。痛みなのか、音なのか、麻酔なのか、器具なのか、それとも過去の経験なのか整理してみてください。不安を紙に書き出し、家族や友人に話すだけでも気持ちが整理されます。
2. 信頼できる歯医者を選ぶ
痛みに配慮してくれ、丁寧に説明してくれるなどの医院の治療方針を参考にして選びましょう。口コミや評判も目にして自分に合いそうな歯科医院を探してください。ホームページで医院の雰囲気を事前に確認するのもおすすめです。
3. カウンセリングを活用する
診療前に不安を相談できるカウンセリングを行う医院があります。怖さや痛みが苦手と正直に歯科医師やスタッフへ伝えると、麻酔や治療方法を工夫してくれることが多いです。
4. 段階的に慣れる
いきなり歯を削る治療を初回にされると、通院をするのが難しくなります。まずはどのような治療を受けるか説明してもらうところからスタートしましょう。次は歯をクリーニングしてもらうようにするなど軽めの目的にして歯医者さんへ通うことに徐々に慣れてください。
5. 無痛治療や静脈内鎮静法を検討する
麻酔についても様々な方法があります。
当院の痛みに配慮した麻酔
当院が行っている痛みに配慮した麻酔注入についてご説明します。まず痛みを軽減する極細の注射針を使用し、麻酔薬を体温位に温めます。一気に注入すると圧力がかかり、痛みと感じるため、電動麻酔器を使用し、ゆっくりと注入を行うように配慮しています。
難しければ笑気麻酔や静脈内鎮静法
麻酔が難しい子供、、歯科恐怖症、嘔吐反射の強い方には、笑気麻酔という方法があります。体内に成分が残らない笑気ガスを鼻から吸い、意識がなくなることなく、リラックスした状態で歯科治療を受診できます。その他にも、静脈内鎮静法という方法で、静脈に鎮静剤を投与してウトウト眠ったような状態で自発呼吸をしながら治療を受けられる方法も選べます。静脈内鎮静法は、歯科治療を行う歯科医師とは別に、患者さんの全身をモニターで管理する麻酔科医もいるため安心です。
6. リラクゼーション方法を取り入れる
深呼吸やリラックスする音楽を歯科治療前に聴き、安定するようにしましょう。リラックスグッズを持参して手の中に握っているのも落ち着けるかもしれません。自分なりに安心できる方法があれば取り入れましょう。
7. 小さな成功体験を積む
歯医者の予約を取るという行動も大きな一歩です。実際に歯医者へ行けたら自分を褒めてあげましょう。少しずつ怖さが減っていけば、通える自信が芽生えると思います。
治療箇所が多くても恥ずかしがらずに見せよう
お口の中の治療箇所が多いから恥ずかしいと歯科医院へ行かないのは損です。歯科医師は歯を治すためのプロであり、患者さんの口腔内を見慣れているので、恥ずかしがる必要はありません。頑張って見せれば、どの部分がトラブルを起こしているかが分かり、治療により必ず改善します。今まで放置したと自分を責めず、将来的にきれいで健康な状態にする第一歩と前向きに考えましょう。
まとめ

歯医者に行きたくないという気持ちには、痛み、不快感、費用、心理的負担など、さまざまな理由が絡み合っています。このような不安を理解して優しく説明してくれる歯医者さんや、痛みを抑える治療法の選択肢が多い医院を選ぶことで、少しずつ克服することが可能です。痛くないから大丈夫と思っても、症状は静かに進行しているため、定期検診と早期治療は、将来的な健康と費用面の両方を守ることになります。自分の不安の原因を理解し、信頼できる歯科医院を選びましょう。