審美歯科

ラミネートべニアは自然で美しい前歯を手に入れる治療法?

ラミネートべニアという言葉を耳にされたことがある方はおられると思いますが、どのようなものなのかを明確に理解されている方は意外と少ないかもしれません。今日はラミネートべニアの歴史や、メリット・デメリットなどについて詳しくご紹介いたします。

ラミネートべニアとは何か

ラミネートべニアとは、人から見える前歯の表側を少しだけ削り、その上から薄いセラミックなどで作られたシェルという板状のものを貼り付ける審美歯科の治療法のひとつです。 ネイルチップを爪に貼るのと同じく、歯に薄いセラミックを貼り付けて装着するイメージで、歯の色、形、大きさ、隙間など、主に見た目の改善を目的としています。

ラミネートべニアの特徴

補綴物(ほてつぶつ)治療であるクラウンや差し歯とは異なり、ラミネートべニアは健康な歯を大きく削る必要が少ない点が挙げられます。例えば、0.3〜0.5mm程度だけ歯の表面を削るとイメージしていただくと分かりやすいでしょう。 歯を極力残しつつ、審美性を高めたい方にとって有効な選択肢とと言えます。

ラミネートべニアの歴史と背景

さて、ラミネートべニアという治療法には、意外にも歴史的な背景があります。20世紀初頭、1920年代のハリウッド映画界では、俳優たちが撮影のために歯の脱着式チップを装着していたという記録があります。つまり、歯そのものを治療する目的ではなく、見た目を変える演出として用いられていました。

近年のラミネートべニア

1990年代頃から歯科治療としてのラミネートべニアが普及しはじめました。当初は歯科用プラスチック(レジン)製のチップを貼る方式が主でしたが、プラスチックの特徴として吸水性があり、変色しやすく、すり減りやすいという課題がありました。その後、薄いセラミック素材の進化により、より自然な透明感と耐久性を兼ね備えた新しいラミネートべニアが登場します。それに伴い、審美歯科の分野で前歯の見た目改善治療として広く認知されるようになりました。

ラミネートべニアで改善できる症状やケース

ラミネートべニアが有効とされる主な症状やケースには次のようなものがあります。

  • 削れている歯をきれいにしたい
  • 小さな穴や欠けのある歯をカバーしたい
  • 生まれつき歯が小さい矮小歯で周囲の歯と大きさや形が異なって見える
  • 歯がねじれて生える捻転歯である
  • 前歯に少し歯並びの乱れや隙間がある
  • ホワイトニングではなかなか理想の白さが得られない変色歯がある
  • 神経を抜く抜髄をしたため、色が暗くなった歯を改善したい

このような症状やケースは、ラミネートべニアを行うことで、視覚的に整った印象にできることがあります。 ただし、全ての歯並びや噛み合わせの問題に適応するわけではありません。軽度の審美的な目的を改善するために選ばれることが多く、重度の歯並びのトラブルが起きている不正咬合、噛み合わせに大きな問題がある方は、矯正治療や被せ物など別のアプローチが選ばれることがあります。

ラミネートべニアのメリット

ラミネートべニアを選ぶことで得られる主なメリットを挙げていきましょう。

歯を削る量が少ない
被せ物などに比べて歯の削合量が非常に少ないため、歯へのダメージを抑えやすいという点が魅力です。

短期間で治療が完了しやすい
矯正治療や大規模な補綴治療と比べて通院回数や期間が少なく済むことが多く、早く見た目を整えたい方には大きなメリットです。

自然な見た目で透明感が得られやすい
薄いセラミックシェルによって、隣の歯との色や質感の調和もしやすく、自然な白い歯の印象を作りやすいです。

変色や着色が起こりにくい素材が使用されている
セラミック製のものは時間が経っても色が変化しにくいため、美しさを長く保てる可能性があります。

金属アレルギーのリスクが低い
金属アレルギーの方や、イオン化した金属の体内蓄積を心配される方には、メタルフリーの仕上がりとなり、綺麗で健康的な審美治療が行えます。

前歯の形や色、隙間が気になる方、治療期間を短くしたい方、歯を大きく削りたくない方にとってラミネートべニアは非常に魅力的でしょう。

ラミネートべニアのデメリット

一方で、ラミネートべニアにもデメリットやリスクなどがあり、理解しておく必要があります。

歯を削る必要がある
少しだけ削ると言っても、完全に無削合ではないため、健康な歯を削ることになります。一度削った歯質は元に戻らず、治療前にその点をしっかり理解することが重要です。

噛み合わせや歯並びを根本から改善するわけではない
ラミネートべニアは見た目の改善が目的であり、歯を動かして理想の位置に並べる矯正治療とは異なります。噛み合わせに大きな問題がある患者さんであれば、この治療が適応外となることもあります。

破損や剥離のリスクがある
薄いセラミックシェルを天然歯の表面に貼る構造のため、歯ぎしりや食いしばりがあったり、硬いものを強く噛む習慣があると、割れたり剥がれたりするリスクが高くなります。他の補綴治療である詰め物や被せ物などに比べても高くなる可能性があります。

費用が高額で保険適用外のケースが多い
自由診療の扱いになることが多く、使用する素材や医院によって金額が大きく変わります。費用対効果を慎重に検討する必要があります。

適応できないケースがある
例えば歯並びが著しく悪く、すでに多くの補綴物が入っていたり、歯の欠損が大きく歯ぎしりが強いというケースであれば、ラミネートべニアが向かない可能性があります。

短期間で見た目を整えたいというメリットの裏には、長期的な歯の健康や費用面を含めて検討することが大切です。

ラミネートべニアが向いている人・向かない人

ラミネートべニアが特に向いている人と、反対に向かない人はどのようなものか、整理しておきましょう。

向いている人

前歯の見た目の改善を優先したい
治療期間をできるだけ短くしたい
歯を大きく削る被せ物治療には抵抗がある
変色歯がありホワイトニングでは満足できない
金属を使わない審美治療を希望する

向かない、もしくは慎重を要する人

歯並びや噛み合わせが大きく乱れ、矯正治療が必要と診断された
歯ぎしりや食いしばりが癖として強く、補綴物の破損リスクが高い
歯の欠損や土台が不十分で差し歯などが既に入っている
治療後のケアや定期メンテナンスへの通院が難しい

ご自身の歯の状態や習慣、予算及び治療期間などを考慮し、歯科医師と十分に相談したうえで選択することが重要です。

治療の流れや素材の種類やメンテナンス

ラミネートべニアを実際に導入するにあたって、知っておきたいポイントを3つに分けてご説明します。

治療の流れ

当院の一般的な治療の流れをご紹介しましょう。

  1. 初診カウンセリング:歯並びや噛み合わせ、隙間などの歯の状態を相談
  2. 診断し治療計画の説明:ラミネートべニアが適応か否か、素材や本数、費用、治療期間を確認
  3. 歯の前処理:歯の表面を0.3〜0.5mm程度薄く削る
  4. 型取りや設計:薄いセラミックのシェルを当グループの技工所で作製
  5. 仮歯の試適:見た目が悪くならないように仮歯を装着し、色や形の確認
  6. 装着:精巧に作製したシェルを接着し、仕上げして調整
  7. 定期検診:装着後も定期的に来院し、歯茎や隣接歯、清掃状態のチェック

メンテナンスや長持ちさせるためのポイント

ラミネートべニアを長く良好な状態で使用するためには、装着後のケアも重要です。毎日、丁寧なブラッシングとフロスや歯間ブラシを使用し、貼り付けた歯の周囲の清掃を怠らないようにしましょう。装着後の色調や歯茎の状態、シェル周囲の虫歯リスクなど定期的なプロのメンテナンスも受診してください。歯ぎしりや食いしばりが急に症状として現れた方は、就寝用マウスピースのナイトガードを検討し、破損や剥離リスクを抑えなければなりません。硬いものや粘着性の高いものを前歯で噛む習慣がある方は、注意しておきましょう。

補綴物自体は虫歯になりませんが、貼り付けた歯の周囲から虫歯や歯周病になりうるため、トータルな口腔ケアが重要です。これらを守れば、ラミネートべニアによる審美治療の効果をより長く維持することが可能となります。

ラミネートべニア開始前に押さえるべき4つのポイント

次の4つのポイントを十分に押さえておくことが重要です。

項目 内容・ポイント
歯の状態を確認 歯並びや噛み合わせ、歯ぎしりの有無をチェックし、歯科医師と適応を確認
素材や費用を共有 セラミックの種類で見た目や耐久性、費用が変わるため、仕上がりイメージを共有
メリットとデメリットを理解 歯を削る量が少なく短期間というメリット、費用や適応制限があるデメリットともに把握
メンテナンスを意識 日々の歯磨きや定期検診、歯ぎしり対策で長持ちさせる

まとめ


ラミネートべニアという選択肢は、前歯の色や形、隙間が気になる方、治療期間をできるだけ短く済ませたい方、歯を大きく削ることに躊躇がある方にとって非常に魅力的な審美治療です。本当に自分にとって最適な治療かは、口腔状態によって異なります。じっくり検討して、見た目の改善のみでなく、口腔全体の健康も併せて考えることが、良い笑顔を長く保つ秘訣です。

この記事の監修者

医療法人真摯会
西宮クローバー歯科・矯正歯科 院長
廣石 勝也
朝日大学歯学部卒業。大阪歯科大学総合診療科臨床研修終了。国際口腔インプラント学会会員。

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