インビザラインのアライナーが割れてしまったときの対処方法とは?

西宮クローバー歯科・矯正歯科 歯科医師 廣石 勝也

インビザラインのアライナーが割れてしまったときはどうする?

アライナーが割れた(ヒビが入った)と気づいたら、まずは無理に使い続けず、治療中の歯科医院へ早めに連絡し、指示が出るまで「直前のアライナー」で歯の後戻りを防ぐのが基本です。接着剤などで自己修理するのは避けましょう。

この記事はこんな方に向いています

  • インビザライン治療中で、アライナーが割れた/欠けた/ヒビが入った方
  • すぐ受診できない状況で、応急対応を知りたい方
  • 「前に戻す? 次に進む?」で迷っている方

この記事を読むとわかること

  1. 破損に気づいた直後の安全な動き方(優先順位)
  2. やってはいけない対応(自己修理・放置など)と理由
  3. 破損を減らすコツ(着脱・保管・食いしばり対策)

 

アライナーが割れたら、まず何をすべき?

アライナーが壊れた

アライナーの破損は治療中に起こり得るトラブルの一つです。大切なのは、口の中を守りつつ、治療計画のズレを最小にすること。最初の動き方でリカバリーのしやすさが変わります。

「使用中止→医院へ連絡→前のアライナーへ」が基本です。

まずは次の順で対応します。

  1. いったん外して、割れ方を確認する
    → ヒビ/欠け/分断などで安全性が変わります。鋭い断面があると粘膜を傷つける可能性があります。
  2. 割れたアライナーの使用は中止する
    → 形が変わった状態で使うと、歯に不適切な力がかかったり、口の中を傷つけたりする恐れがあります。
  3. 治療中の歯科医院へ連絡する
    → 割れ方によっては作り直しが必要になるため、まず指示をもらうのが安全です。口の中を傷つけた場合も伝えましょう。
  4. 指示があるまで放置しない(何も付けない時間を長くしない)
    → 放置すると後戻りが起こる可能性があります。
  5. 受診まで時間がかかるなら、基本は「直前のアライナー」を装着する
    → 治療の遅れや後戻りを防ぐ目的です(最終判断は医院の指示が優先)。

状況別応急対応の早見表

状況 まずやること やってはいけないこと 緊急度
小さなヒビで痛みなし 写真を撮って医院へ連絡、指示待ち 接着剤で補修
端が欠けた/ギザギザする 使用中止→前のアライナーへ そのまま我慢して装着
真っ二つ/大きく割れた 使用中止→前のアライナーへ→連絡 次のアライナーへ自己判断で移行
口内炎・出血・強い痛み 使用中止→連絡(症状も共有) 「そのうち治る」と放置 最優先
前のアライナーがない 使用中止→連絡→指示待ち 何も付けずに長時間放置

表のポイントをまとめると、「安全(傷を防ぐ)」「情報(連絡材料)」「維持(前に戻す)」の順で守る、ということです。

加えて、小さな破片が取れている可能性もあります。外したときに欠片が見当たらない場合は、口の中に残っていないかを軽く確認し、見つからなければ無理に探らず医院へ相談してください(喉に違和感が強い・咳が止まらないなどがあれば医療機関へ)。

また、割れたアライナーを外した後は、いつも以上に歯磨きをていねいにして、歯垢を残さないことが大切です。装置トラブルがあると装着時間が乱れやすく、口腔内環境も崩れがちです。できれば次回の健診で、清掃状態や噛み合わせも含めて確認してもらうと安心です。

割れたアライナーは装着し続けても大丈夫?

判断の軸は“割れの大きさ”より“フィット感と安全性”です。アライナーがフィットしていないと歯の動きが計画通りにいかず、割れた部分のアライナーが当たって口内炎や傷の原因になります。

基本は装着を中止。痛い・当たる・浮くなら即中止です。

割れたまま使い続けないこと、破損に気づいたら速やかに使用を中止することが注意点として挙げられます。ご自身での修理(接着剤など)は、形状変化で矯正力が乱れるだけでなく、口腔内への影響も懸念されるため避けましょう。

夜間・休日で連絡がつかないときの“暫定ルール”

  1. 痛み・当たりがある/大きく割れた→ 割れたものは外し、前のアライナーが入るならそれで維持します。前が無いなら無理に次へ進めず、装着なしの時間をできるだけ短くして連絡待ちにします。
  2. ヒビが小さく装着感が普段通り→ 自己判断で「大丈夫」と決めず、翌営業日に必ず連絡する前提で、短時間の暫定装着にとどめます(痛みや引っかかりが出たら即中止)。

アライナーが壊れたときのルールはシンプルで、「安全性が怪しいなら外す」「迷うなら前に戻す」「次へ進むのは指示が出てから」です。

受診までの間、前のアライナーに戻すのが基本なの?

インビザラインは装着時間が成果に直結します。外している時間が長いほど後戻りやフィットしないという不良が起こりやすくなるため、暫定的な対策として“直前のアライナー”で位置を保つ考え方がよく取られます。

「何も付けない」より「前に戻す」が基本です。

交換に時間がかかる場合は、直前のアライナーを装着して治療の遅れや後戻りを防ぐ、という対応をとります。

インビザラインは食事や飲み物(基本は水以外)、歯磨き・フロスのときに外せますが、その分「付けている時間」が結果に直結します。公式FAQでも1日20~22時間の装着が推奨されています。※当院では後戻りを最小限にするために、22時間以上を推奨しています。

ただし、前のアライナーが入らない/強い痛みが出る場合は無理をせず、医院へ連絡して指示を仰いでください。

前のアライナーをすぐ捨ててしまうと、こういうときに困ります。少なくとも1〜2セット前までは保管しておくと、いざというときの“命綱”になります。

次のアライナーに進める判断はどう決める?

自己判断で次へ進むと、フィットしない不良や強い痛みが出て、結果的に治療が遠回りになることがあります。進めるか戻すかは、破損の状態や次のアライナーの適合など複数の条件で決まります。

次に進むかどうかは担当医の指示が前提。自己判断で飛ばさないのが安全です。

目安として、担当医は「交換まであと何日のタイミングか」「次のアライナーが正しく装着できるか」「強い痛みや浮きがないか」などを見て判断します。迷ったら、前のアライナーで状態を維持しつつ連絡しましょう。

歯科医院に連絡するとき、何を伝えるとスムーズ?

連絡の目的は“治療のズレを最小にするための判断材料を伝えること”です。判断材料が揃うほど指示が早く具体的になります。

「どのアライナーで」「いつ」「どんな割れ方」を伝えます。

  1. いつ気づいたか
    → 例:外した瞬間に発見、など。
  2. どのアライナーか(上・下、何枚目/何週目)
    → ケース番号や交換スケジュールが分かると助かります。
  3. 割れ方と場所(ヒビ/欠け/分断、前歯側・奥歯側など)
    → 口の中に当たる場所かどうかも重要です。
  4. 痛み・口内炎・出血の有無
    → 口腔内を傷つけた場合はそのことも伝えるよう勧められています。
  5. 前のアライナーが装着できるか
    → 代替の可否で指示が変わります。
  6. 写真(外した状態+装着状態)
    → スマホで十分です。

ここまでを総括すると、「医院が判断しやすい情報を伝えるほど、結果的に治療がスムーズに進む」ということです。

交換や費用はどうなる?「無償」と「有料」の目安は?

破損したアライナーは“修理”ではなく“再作製(交換)”になることもあります。費用は治療プランや保証の有無で変わり、初期不良や保証期間内なら無償の可能性、不注意や紛失、保証期間外は有料になりやすいと整理されています。

無償も有料もあり得ます。契約内容と医院の案内を確認しましょう。

  • 無償の可能性 → 初期不良/保証期間内
  • 有料になりやすい → 不注意による破損/紛失/保証期間外
  • 目安 → 再作製が中心で、1枚あたり数千円〜1万円程度が目安(医院・プランで異なります)。届く迄に2週間程度はかかる。

費用の心配で連絡を先延ばしにすると、後戻りや計画のズレで別の調整が必要になることもあります。まずは現状を担当医と共有することが優先です。

そもそも、なぜアライナーは割れるの?原因別の対策は?

アライナーは薄い素材で出来ているため、負荷・熱・着脱のねじれ・保管中の事故などで破損します。原因がわかると再発予防がしやすくなります。

原因としては「食いしばり」「装着したままの食事」「着脱時に無理な力がかかった」「保管時のミス」が代表的なものです。

アライナーが割れる原因

  1. 歯ぎしり・食いしばり
    → 就寝中などの無意識の負荷で破損の原因になり得ます。
  2. 装着したままの食事
    → 咀嚼圧や熱で素材が傷みやすいとされています。
  3. 不適切な着脱
    → 乱暴な外し方や無理な力をかけると割れるリスクが上がります。
  4. 不適切な保管
    → ケースなしで置いておくと踏む・落とす・高温で変形などの事故が起こりやすいとされています。

割れるときはだいたい原因がいくつか重なった“複合事故”です。食事で外す回数が増え、急いで外し、ケースに入れず、落として踏んでしまう。起きがちな流れなので、原因を一つずつ潰すのが効きます。

もう割りたくない…予防のコツは?

予防は「生活の中の割れポイント」を減らすことです。着脱の癖、保管の癖、食事の癖、睡眠中の癖を整えるほど、破損は起こりにくくなります。

丁寧な着脱・ケース保管・食いしばり対策が柱です。

予防策として「正しい取り扱い」「適切な保管」「歯ぎしりや食いしばり対策」が挙げられます。

  1. 着脱は両手で均等に
    → 無理な力を加えず、正しい手順で着脱することが重要とされています。
  2. 外したら即ケースへ
    → ティッシュ包みや放置は破損の原因になり得るため、ケース保管が推奨されています。
  3. 高温を避ける
    → 直射日光や高温の場所を避けて保管することが重要です。
  4. 食いしばりが疑わしいなら相談
    → ナイトガード検討や生活習慣の見直しが有効とされています。
  5. 装着時間を守る
    → インビザラインは1日20〜22時間の装着が推奨されています。

総括すると、破損予防は気合いではなく「段取り」です。ケースの定位置と着脱の丁寧さが、いちばん効きます。

旅行・出張中に割れたらどうする?

旅先は受診が難しく、食事回数増で着脱も増えがちです。だからこそ、写真で状況を共有し、前のアライナーで“維持”しながら指示を待つ動き方が安全です。

写真で連絡し、基本は前のアライナーで維持。次へ進むのは指示があってからです。

  1. 割れたら外して保管(捨てない)
    → 状態確認や説明に役立つことがあります。
  2. 口の中に傷があるなら、洗口と安静を優先
    → 痛みや出血がある場合は、その症状も添えて連絡します。
  3. 代替は原則「直前のアライナー」
    → 放置は後戻りリスクがあるため、つなぎとして用います。

旅行用の備えとして「ケース」「ミニ歯磨きセット」「1つ前のアライナー」を同じポーチに入れておくと安心です(装着時間の目標管理にも役立ちます)。

まとめ

アライナーが割れたときに大切なのは、我慢して使い続けることではありません。「割れた!どうしよう?」となった時には、以下のポイントを参考にしてください。

  1. 割れたら 使用を中止(痛い・当たる・浮くなら即)
  2. 歯科医院へ連絡(写真+状況)
  3. 自己修理しない
  4. 指示があるまで 前のアライナーで維持(放置しない)
  5. 再発予防は 着脱・保管・食いしばり対策

アライナーが割れたときの一般的な対処についてご説明しましたが、個別の状態によってどうすれば良いかは変わります。迷ったら早めに歯科医院に相談するのが、いちばん確実です。