歯と口の基礎知識

歯の構造と役割などの基礎知識

歯の構造と役割などの基礎知識

歯の基本的な機能は食物を咀嚼するということで、消化や発音にも影響を与えます。歯の構造を理解することで、適切なケアが可能になり、健康維持に寄与します。

歯の構造

歯の構造と神経

私たちの歯の主な構造は以下のようになっています。

エナメル質

エナメル質は歯冠部の表面を覆う、身体組織の中で最も硬い組織です。しかし虫歯菌の出す酸には簡単に溶けるという弱点があります。エナメル質が酸で溶かされて穴があいてしまうと、再生力がないため、二度と元に戻りません。

象牙質

象牙質はエナメル質、セメント質の内側にあり、歯冠部から歯根部までの歯を形成する組織です。象牙質の中には象牙細管が通っており、象牙細管は組織液で満たされています。虫歯が象牙質まですすむと、痛みを感じます。

セメント質

歯根部の表面を覆う組織で、骨と同じような硬い組織です。歯根膜によって歯槽骨と結合しています。

歯髄

一般に神経と呼ばれる組織で、神経線維、毛細血管、リンパ管などが含まれ、象牙質に栄養を補給します。

歯を支える役割を持つ歯周組織には、歯根膜、歯槽骨、歯肉、歯肉溝が含まれます。これらの組織は、食べ物を噛む際の力を吸収・緩和し、歯に加わる力が歯槽骨に伝わるのを和らげる役割を果たします。

歯槽骨

歯が生えている土台の骨の部分。

乳歯から永久歯への生え変わりについて

乳歯の本数

子供の歯(乳歯)から大人の歯(永久歯)への生え変わりについてご説明します。

生え変わりの年齢

乳歯から永久歯への生え変わりは、子どもの成長に重要な過程です。一般的に、乳歯は2歳半から3歳頃までに全て生えそろいます。その後、5歳半から6歳頃に永久歯への生え変わりが始まり、12歳頃までに全ての乳歯が抜けて永久歯に生え変わります。

生え変わりのスピードには個人差があり、特に男の子より女の子の方が生え変わりが早い傾向があります。

前から何番目の歯か 永久歯の呼び方 上あご 下あご
1 中切歯 7~8歳 6~7歳
側切歯 8~9歳 7~8歳
犬歯 11~12歳 9~10歳
第一小臼歯 10~11歳 10~12歳
第二小臼歯 10~12歳 11~12歳
第一大臼歯(六歳臼歯) 6~7歳 6~7歳
第二大臼歯 12~13歳 11~13歳
第三大臼歯(親知らず) 生える人と生えない人がいる 生える人と生えない人がいる

生え変わりの順序

永久歯への生え変わりは通常、まず下の真ん中の前歯から始まり、次に上の前歯が続きます。この過程は、子どもによって異なるため、一部の子どもでは7歳までに全く歯が生え変わらないこともあります。心配な場合は、6歳以降に小児歯科で相談し、レントゲンを撮影して永久歯の状態を確認することができます。

重要なのは、永久歯は一生使い続ける歯であるため、生えてくるとすぐに虫歯にならないよう、歯磨きに特に気をつけることです。子どもの口腔衛生習慣を早いうちからしっかりと確立することが、健康な永久歯を保つために重要です。

歯の種類と役割

歯は大きく分けて「切歯」「犬歯」「小臼歯」「大臼歯」の4種類があり、それぞれに独自の形状と役割があります。

1. 切歯

  • 位置・・口の最前部に位置し、上下に4本ずつある
  • 役割・・食べ物を噛み切る役割を担っています。食べ物の塊にかぶりついて噛みちぎるのに適しています。

2. 犬歯

  • 位置・・切歯の隣に1本ずつ、上下に合わせて4本ある
  • 役割・・食べ物を引き裂くことに特化しています。

他の歯と比べると先が尖った形状をしており、肉などの塊を噛み切るのに適しています。

3. 小臼歯

  • 位置・・犬歯の後ろに2本ずつ、上下に合わせて8本ある
  • 役割・・食べ物を砕き、すりつぶす役割を担います。平らで凹凸のある表面が特徴で、食べ物を効率よくすりつぶすことができます。

4. 大臼歯

  • 位置・・小臼歯の後ろに、上下に3本ずつある(親知らずを含む)。
  • 役割・・食べ物を細かくすりつぶす主な役割を果たします。広い咬合面があり、効果的に食べ物を砕くことができます。

それぞれの種類の歯は連携して機能し、食物の摂取と消化を助ける重要な役割を果たしています。また、正しい咬み合わせや歯並びは、これらの歯の役割や機能を発揮させるためにも重要です。

歯の働き

歯の健康は全身の健康にも影響があります。

1. 顔の形を整える

子供歯は単に食べ物を噛み砕くためだけではなく、顔の外観や形状にも影響を及ぼします。

  • 支持構造・・上顎と下顎の歯が適切にかみ合っていると、顔の骨格が適切な位置を維持しやすくなり、結果として顔の形状が整います。
  • 顔の対称性・・歯並びが整っていると、顔の左右が均等に整いやすく、審美的にも望ましい形状を保つことができます。
  • 横顔のラインの改善・・歯と顎の位置は横顔に大きな影響を与えます。例えば、噛み合わせが正しいと顎の前後の位置が正しく保たれ、横顔のラインを改善します。

2. 食べものを噛む

子供歯には切歯(前歯)、犬歯、小臼歯、大臼歯といった種類があります。それらは異なる形状と機能を持っており、食べ物を効率的に噛み砕くために協力し合います。

噛む動作には次のようなものがあります。

  • 閉じる動作・・食べ物を口に入れた後、顎が閉じて歯が食べ物に接触します。
  • 咀嚼・・顎の筋肉が、食べ物を噛み砕くために歯を動かします。このとき、唾液が食べ物と混ざり合い、消化酵素を含んだ柔らかい塊を形成します。
  • 飲み込む準備・・食べ物が十分に細かくなったら、舌でそれを食道へと押し込みます。

3. 発音を助ける

子供話す時には唇や舌が動いて音を作り出しますが、唇や舌と同様に、歯にも発音を助ける役割があります。

  • 閉鎖音・・唇を閉じてから開くことで音を作り出します。
  • 摩擦音・・唇を他の部位に近づけることで、空気の流れを狭めて摩擦を作り出します。
  • 丸め・・唇を前方に突き出して丸めることで、特定の母音の音色を変えます。

歯の構造と役割に関するQ&A

歯の主な機能はどのようなものですか?

歯の基本的な機能は食物を咀嚼することです。この過程は消化を助けると同時に、発音にも影響を与えます。適切な歯のケアにより、これらの機能を維持し、全体的な健康を支えることができます。

エナメル質の特徴と弱点は何ですか?

エナメル質は歯の表面を覆う組織で、身体の中で最も硬い組織です。しかし、その強度にもかかわらず、虫歯菌が生成する酸には弱く、簡単に溶けてしまうという弱点があります。

乳歯から永久歯への生え変わりは一般的にいつ始まりますか?

乳歯から永久歯への生え変わりは、一般的に5歳半から6歳頃に始まります。この過程は12歳頃まで続き、その間に全ての乳歯が抜けて永久歯に生え変わります。

まとめ

歯のキャラクター3

歯は私たちの健康に不可欠な役割を果たしており、エナメル質、象牙質、セメント質、歯髄などが組み合わさって強度と機能を提供しています。

乳歯から永久歯への生え変わりは個人差があり、早期の口腔衛生習慣確立が重要です。さらに、切歯、犬歯、小臼歯、大臼歯の4種類の歯が連携して食物の咀嚼と消化をサポートしています。

口腔健康を維持し、全身の健康に貢献するために、適切なケアと定期的な歯科健診が必要です。歯にとっての最善のケアを心がけましょう。

人間の歯の構造と機能について、以下の専門的な論文を参考に説明します。

1. MacDougall & Javed (2010) の研究によると、人間の歯は冠(クラウン)と根(ルート)からなる個別の器官です。歯は3つの異なる鉱化された細胞外マトリックス、すなわちエナメル質、象牙質、セメント質から形成され、これらが時間と空間にわたって統合されています。象牙質は歯の最も豊富なマトリックスであり、冠と根の両方を覆っています。これにより、歯は人体で最も硬い構造の一つとなります。【MacDougall & Javed, 2010

2. Zhai et al. (2018) によると、歯は顎の歯胚組織から形成された高度に分化した咀嚼器官であり、エナメル質、象牙質、セメント質、歯髄、歯周組織などから構成されています。歯は咀嚼、発声、審美性の重要な機能を持ち、歯再生の研究は組織工学の理論と技術の急速な発展により新しいアイデアが登場しています。歯科組織から多種多様な幹細胞が分離され、これらの細胞は歯の組織を再生する能力を持っています。【Zhai et al., 2018

これらの論文から、人間の歯は複雑な構造を持ち、咀嚼や発声、審美性といった重要な機能を果たしていることがわかります。また、歯の再生に関する研究は現代の組織工学において重要な役割を果たしています。

この記事の監修者

医療法人真摯会
西宮クローバー歯科・矯正歯科 院長
廣石 勝也
朝日大学歯学部卒業。大阪歯科大学総合診療科臨床研修終了。国際口腔インプラント学会会員。

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