矯正歯科

大人が歯列矯正を受ける前に知っておくべきポイント

大人が歯列矯正を受ける前に知っておくべきポイント

大人の歯列矯正はやめたほうがいいという意見がありますが、その理由は成功するケースと失敗するケースの両方があるためです。一般的に大人の矯正は子供よりも治りにくいといわれますが、大人の矯正のポイントとして、リスク、抜歯や顎関節症、咬み合わせの問題、痛み、治療後の歯の後戻りについてご説明します。

大人の矯正のリスクとは?

女性

大人の矯正ならではのリスクは以下のようなものです。

  1. 大人の矯正では抜歯が必要になる場合が多い
  2. 顎関節症の方は矯正治療はおすすめできない(不正咬合が原因で顎関節症を起こしている場合を除く)
  3. 見た目だけを良くしようとすると咬み合わせが悪くなる場合がある
  4. 大人の歯は子供と比べて動きにくく歯を動かすには痛みが伴う
  5. 大人の歯は治療後に元の位置に戻ろうとする力が強く働くため保定装置をつける期間が長く必要になる

大人の歯列矯正のリスクと対策

リスク 説明 対策
抜歯の必要性 大人の矯正では、スペース確保のために抜歯が必要になることが多い 歯科医と相談して治療計画を立てる
顎関節症のリスク 顎関節に負担がかかる可能性がある 矯正前に顎関節の状態を確認し、必要なら専門医と連携する
見た目の変化 矯正によって顔の形やバランスが変わることがある 見た目の変化について事前に説明を受け、納得の上で治療を進める
痛み 歯が動く際に痛みが生じる 痛みがある場合は歯科医に相談し、痛み止めを使用する
後戻り 治療後に歯が元の位置に戻る可能性がある 保定装置(リテーナー)をしっかりと使用する

大人の矯正ではどんな失敗が起こりやすい?

大人の矯正では、子供の矯正よりも、より見た目に特化した目的になりがちです。歯全体の健康を考えながら矯正治療を受けることが大切です。

  1. 見た目をきれいにするだけの治療を希望した結果、咬み合わせが悪くなった
  2. 矯正前と顔が変わってしまい、顔が長くなった(鼻の下が長くなった)、ほうれい線が目立つようになった等、見た目が悪くなった
  3. 矯正治療を受けている間に虫歯が出来てしまった
  4. 矯正治療を受けている間に歯周病が進行してしまった
  5. 抜歯矯正をしたら歯と歯の間に隙間が空いてしまった
  6. 思っていたよりも早く後戻りが起こってしまった

大人の矯正治療で起こりやすい失敗と対策

失敗例 説明 対策
咬み合わせの悪化 見た目重視の矯正で咬み合わせが悪くなる 咬み合わせを考慮した治療計画を立てる
顔の形の変化 矯正によって顔が長くなるなどの見た目の変化が生じる 矯正前に顔の変化について説明を受ける
虫歯や歯周病の進行 矯正中に口腔ケアが不十分で虫歯や歯周病が進行する 矯正中の口腔ケアを徹底し、定期的な歯科検診を受ける
抜歯矯正による隙間 抜歯後のスペースがうまく埋まらない 矯正計画を立て、スペース管理を徹底する
早期の後戻り 矯正後に歯が元の位置に戻る 保定装置を適切に使用し、定期的な検診を受ける

歯の噛み合わせはどうして大切なの

矯正治療では歯並びの見た目がきれいに整うだけでなく、正しい噛み合わせにすることも重要です。歯の噛み合わせが大切な理由は以下のような点です。

  1. 食べ物を噛み砕いて口の中で唾液と良く混ぜ消化しやすい状態で胃へ運ぶ
  2. 歯の噛み合わせが悪いと発音に音に問題が生じることがある
  3. 歯並びや顎の位置が悪いと顔の輪郭に悪影響を与えることがある
  4. 不適切な噛み合わせで食事をすると特定の歯が大きく摩耗することがある
  5. 噛み合わせが悪いと歯垢や食物のかすが歯にたまりやすくなり口臭の原因になる
  6. 歯の噛み合わせが悪いと顎関節症状や不快感が発生する可能性がある

治した方がいい不正咬合とは?

大人の矯正歯科は昔に比べて非常に進化しており、さまざまな不正咬合の問題を解決することが可能です。矯正を考える際のポイントや特に治療を検討するべき不正咬合には以下のようなものがあります。

1. 咀嚼、発音などの機能的な問題がある場合

不正咬合によって良く噛めない、発音がしにくい等の問題があるとき。

2. 顎関節症のリスク

不正咬合によって顎関節に負担がかかっている場合は、顎関節症のリスクが高くなる。

3. 歯が噛み合っていないことによる歯の摩耗や欠け

歯が正しく噛み合っていない場合、歯の一部に大きな力がかかって摩耗や欠けの原因となることがある。

4. 口元の見た目

前歯にガタガタや出っ歯などの不正咬合があると大変目立つ。

5. 虫歯・歯周病のリスク

歯が重なっている等の理由で歯磨きが難しくなると、歯と歯の間に汚れがたまりやすくなって虫歯や歯周病のリスクが高まる。

不正咬合の種類

大人の歯列矯正のメリットとデメリット

項目 メリット デメリット
見た目の改善 歯並びが整い、自信が持てる 治療期間が長くなる場合がある
咬み合わせの改善 食事や発音が楽になる 痛みや不快感を伴う
口腔健康の向上 虫歯や歯周病のリスクが減る コストが高い
自己管理能力の向上 口腔ケアの重要性を理解する 保定装置の使用が長期間必要

大人の矯正治療における主なリスクに関するQ&A

大人の矯正治療における主なリスクは何ですか?

大人の矯正治療のリスクには、抜歯の必要性、顎関節症のリスク、咬み合わせの問題の悪化、痛みの伴う歯の動き、治療後の後戻りのリスクなどがあります。大人の歯は動きにくく、治療後元の位置に戻ろうとする力が強いため、注意が必要です。

大人の矯正治療で起こりやすい失敗とは何ですか?

大人の矯正治療での失敗には、見た目だけを重視した結果、咬み合わせが悪くなること、顔の見た目の変化、虫歯や歯周病の進行、抜歯による歯間の隙間、治療後の早期後戻りなどがあります。全体の歯の健康を考慮した治療が重要です。

どのような不正咬合の場合に矯正治療を検討すべきですか?

矯正治療を検討すべき不正咬合には、咀嚼や発音の問題、顎関節症のリスク、歯の摩耗や欠け、口元の見た目の問題、虫歯・歯周病のリスクが高まる状態などがあります。これらの問題は日常生活や健康に影響を及ぼす可能性があるため、矯正治療が推奨されます。

まとめ

歯のキャラクター5

大人の歯列矯正には成功と失敗のケースがあり、そのリスクと注意点を理解してから治療を受けましょう。

大人の矯正に伴うリスクには抜歯の必要性、顎関節症、咬み合わせの問題、痛み、歯の後戻りのしやすさなどが含まれます。また、矯正治療では、見た目だけでなく噛み合わせも考慮すべきであり、注意が必要です。

大人の矯正治療では以上のような様々な点を考慮しながら、歯の健康と美しさを両立させるために、適切な矯正の治療計画の検討が重要になります。

大人が歯列矯正を受ける前に知っておくべきポイントについて、以下の2つの研究が参考になります。

1. 成人の歯列矯正治療における特殊性の考慮
大人になってから矯正を始める患者さんは25歳から40歳の方が多く、子供時代や青年時代に歯列矯正治療を拒否したか、その時点で経済的な余裕がなかったという理由で成人矯正を希望されるケースが多いです。この研究では、骨の一般的な水平的委縮による歯の不正位置を矯正するために、審美的理由で歯列矯正治療を求めた45歳の患者さんのケースが紹介されています。他の歯科治療と比較して、歯列矯正療法は平均18~24ヶ月という長期間を必要とするため、適切な診断を確立し、リスク、合併症、および歯列矯正後退の軽減を目的とした適切な治療計画を立てることが重要です。【Decusară, Sincar, & Popa, 2018

2. 成人の歯列矯正患者さんに対する新しい選択肢
成人における歯列矯正治療を求める人が増えています。これらの患者さんは、重症度の異なる咬合不正だけでなく、整復術および歯周病の追加的なニーズを有し、整合性のとれた多分野にまたがるケアが必要です。さらに、今日の成人患者さんは、より審美的で目立たない歯列矯正装置を要求します。この論文では、成人の歯列矯正患者さんを管理する際の重要な考慮事項が議論されています。また、成人患者さんの管理をよりよく計画するために利用できる最近の技術的進歩や、利用可能な審美治療オプションとその長所と短所についても強調しています。【Tarraf, 2015

これらの論文に基づいて、大人が歯列矯正を受ける前に知っておくべき主なポイントは、成人の歯列矯正治療は通常、美容的または機能的な理由で行われ、一般的に治療期間は長く、多分野にまたがるケアが必要であることです。また、治療計画には、審美的、機能的な要件だけでなく、患者さんの年齢、全体的な歯の健康、および歯周病の有無を考慮する必要があります。

この記事の監修者

医療法人真摯会
西宮クローバー歯科・矯正歯科 院長
廣石 勝也
朝日大学歯学部卒業。大阪歯科大学総合診療科臨床研修終了。国際口腔インプラント学会会員。

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