矯正歯科

歯の矯正で痩せるって本当?

「歯の矯正で痩せるって本当?」

歯列矯正をしようか悩んでいる方が、そのような情報を収集すると、痩せる目的でやってみようという方がおられるかもしれません。歯列矯正は歯並びや噛み合わせを改善する目的で行う治療法です。結果として痩せる可能性はゼロではありませんが、あくまで歯並びや噛み合わせを正しい位置にするということを認識しておきましょう。

歯列矯正で痩せると言われる理由は?

歯の矯正をすると痩せると言われるのには、いくつかの間接的な理由があります。医学的に矯正をすれば脂肪が燃えるということは決してありませんが、生活習慣の変化や食事制限などが影響して、結果的に体重が減るケースがあります。

間食の減少

矯正中は食後すぐに歯磨きをしないと虫歯のリスクが高まるため、間食が減りやすくなります。特に装置の取り外しが必要な場合や、歯に物が詰まりやすい装置を使っていると、どうしても間食より歯磨きの方が大変となり、無意識のうちに食べる頻度が減ることが多いです。

ダイエット意識の向上

歯列矯正を始める人は見た目の改善への意識が高くなっておられる傾向にあります。これがきっかけで生活習慣全体の見直し(食事、運動、睡眠など)を始める人もいます。その結果、ダイエットにもつながるケースがあります。

ストレスや環境変化による食欲の変化

矯正中は、口腔内の違和感や発音の変化、見た目の変化などでストレスを感じることもあり、食欲が落ちる人もいます。特に矯正初期は、食べるのを億劫に感じる傾向があります。

ワイヤー矯正での食事制限による摂取カロリーの減少

矯正中は、歯が動く際の痛みや、矯正装置による違和感から、硬いものや噛みにくい食事を避ける傾向があります。また、避けることが多い食品があり、それらが高カロリーであれば、カロリー摂取が減ることになります。

  • スナック菓子や飴
  • ハンバーガーなど硬くて大きなもの
  • 炭酸や糖分の多い飲料

どうして矯正すると食事制限があるの?

固いものを噛むとブラケットやワイヤーが外れたり、変形するリスクがあるため、装置への負担を減らすために行います。また、歯が動くときには痛みが出やすく、噛む力をかけると不快感を伴うことから、食事制限により痛みや違和感を軽減します。装置の隙間に食べ物が詰まりやすく、歯磨きがしづらくなるため、制限により虫歯・歯周病予防を行います。

避けるべき食べ物

食品カテゴリ 理由
せんべい、氷、ナッツ、りんご丸かじりなどの固いもの 装置の破損リスクあり
ガム、キャラメル、餅などの粘着性の高いもの 装置にくっつきやすく、清掃困難
ごぼう、セロリなどの繊維質な野菜 噛みにくく、装置に挟まりやすい
カレー、コーヒー、赤ワインなど色素の強い食品 装置や歯に着色の可能性
炭酸飲料・ジュース 酸性で歯にダメージ、虫歯リスク増加

食べやすくておすすめの食品

矯正初期・調整直後の痛みが強い頃

  • おかゆ、スープ、豆腐、プリン、ヨーグルト
  • バナナ、蒸し野菜などのやわらかいもの
  • 茹でたパスタ、うどん
  • つぶしたポテト、煮込み料理

矯正装置に慣れてきた頃

  • やわらかい白身魚、オムレツ
  • ミートソーススパゲティなどソフトな洋食
  • 細かく刻んだ野菜や果物

食事中や食後の注意点

  • 一口を小さくして、無理な咀嚼を避け、痛みを軽減する
  • 前歯で噛みちぎらないようにしてブラケットが外れないようにする
  • 食べかすが装置に残りやすいので、食後の歯磨きを徹底する
  • 矯正用歯ブラシや歯間ブラシ、フロスなどの併用をする

マウスピース矯正は食事の自由度高い

マウスピース矯正(スマーティー・インビザラインなど)は、従来のワイヤー矯正と比べて食事の自由度が高いです。ただし、まったく制限がないわけではありません。

食事中はマウスピースを外す

マウスピース矯正の最大の利点は、食事のときに取り外せることです。これにより、ワイヤー矯正のように食べ物を選ばなければならないというシーンが大きく減ります。マウスピース矯正では、装置を外す→食べる→歯磨き→装置をつけるという流れが面倒で、間食やだらだら食べをしなくなる人も多くいます。

マウスピース矯正中の注意点

ただし、マウスピース矯正でもいくつか飲食での注意点があります。

マウスピースをつけたまま飲食はNG

お茶、コーヒー、ジュースなど水以外の飲み物や食べ物を口にすると、マウスピースが変形したり、着色や臭いの原因になります。熱い飲み物は特に注意が必要で、マウスピースが変形して、無理に装着をすると、お口の中を痛めてしまう可能性があります。

飲食の度に外して歯を磨く必要あり

食後に歯を磨かずにマウスピースを装着すると、糖分や食べかすが付着したままマウスピースをはめるため、唾液の自浄作用も働かず、虫歯や歯周病のリスクが高まります。外食や間食の多い人にとっては面倒に感じることもあるでしょう。

装着時間を確保する必要がある

1日20〜22時間の装着時間を確保せねばならず、食事や間食の時間が長いと装着時間が不足します。自由に食べられるとはいえ、だらだら食べは避けたほうがよいです。

比較項目 ワイヤー矯正 マウスピース矯正
食べ物の制限 硬い・粘着質NGなど多い 外せばほとんどなし
着色・破損のリスク ワイヤーやブラケットに着色や破損の可能性 マウスピース装着中に飲食しなければ基本問題なし
歯磨きの負担 常に必要だが困難 食後に外して磨く必要あり
間食のしやすさ 比較的自由 手間があるため控える傾向になる

矯正をすることで噛み合わせが変わることも一因?

歯列矯正を始めてから体重が減ったという声は、散見されます。その一つが噛み合わせの改善による咀嚼機能の向上です。

咀嚼機能が向上するとどうなる?

正しい噛み合わせになることで、しっかりと食べ物を上下の歯で噛めるようになり、満腹中枢がより早く刺激されやすくなります。初期の矯正治療の段階では、装置に慣れていないため、食べ物を噛むのに時間がかかることがあります。食事のペースが自然と遅くなるため、少ない食事量でも満腹感を得られやすくなり、自然と摂取カロリーが抑えられるのです。

咀嚼不十分では何がいけない?

一方で、歯並びが悪いと噛み合わせにくく、咀嚼が不十分となります。満腹感を得るまでに時間がかかりやすく、食べすぎにつながる傾向があります。

機能性が改善されると、食事量のコントロールがしやすくなり、体重が減る可能性があると考えられます。

歯並びが整うのと痩せること以外にメリットは?

歯列矯正によって、歯並びや噛み合わせが整うこと、人によっては痩せること以外にはどんなメリットがあるのかご紹介します。

口元が整う

片側噛みの方など使う筋肉の左右差がある場合は、歯列矯正によって正しい歯並びになると、筋肉の左右差が無くなり口元が整います。また、不正咬合の種類によっては、横顔が美しくなり、フェイスラインが引き締まりることもあります。

虫歯や歯周病予防になる

正しい歯並びになることで歯磨きがしやすくなり、清掃性が高まります。それにより、虫歯や歯周病のリスクを抑えることができます。

肩こりや頭痛が改善される

噛み合わせが悪いことで体全体のバランスが崩れていると、肩こりや頭痛の原因となることもあります。歯列矯正で体全体の健康やバランスを保つことへつながると、肩こりや頭痛が改善されます。

胃腸への負担が減る

歯並びが悪いと咀嚼しづらく、食べ物を丸飲みしてしまうことがあります。丸飲みすると、どうしても消化器官に負担がかかります。歯列矯正でしっかりと噛むことができるようになると、胃腸への負担が減って消化もスムーズになります。

まとめ

矯正治療中の噛みにくさや調整直後の痛みで、食事の量や間食が減ることが間接的に痩せると言われる一因でしょう。また、歯並びを綺麗にすることで、見た目への変化や健康志向が高まり、自主的に注意したり、食べられるものが限定される治療もあるのでそれが関係しています。ただし、歯の矯正は痩せる目的で行われるものではありません。あくまでも、審美性や機能性を改善するための治療です。

この記事の監修者

医療法人真摯会
西宮クローバー歯科・矯正歯科 院長
廣石 勝也
朝日大学歯学部卒業。大阪歯科大学総合診療科臨床研修終了。国際口腔インプラント学会会員。

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