歯と口の基礎知識

朝の歯磨きのタイミングはいつがいい?

朝の歯磨きのタイミングはいつがいい?

朝の歯磨きのタイミングがなぜ大切か、説明できるという方はどれくらいおられるでしょうか。単なる習慣で行うのではなく、お口の中で細菌が増殖した状態であるため、健康を左右します。

朝の歯磨きがなぜ大切なの?

寝ている間、口の中では唾液の分泌量が減少しています。乾燥気味の口腔内は細菌が繁殖しやすい状態になり、朝起きたときの口臭やねばつきなど不快に感じる原因は、細菌の増殖にあるのです。

ここで重要になるのが朝の歯磨きのタイミングで、いつ磨くかによって、口内環境の改善効果や虫歯・歯周病予防の効果に違いが出ると言われています。

なぜ睡眠中に唾液が減るの?

唾液には、安静時唾液と刺激唾液があり、刺激唾液は就寝中に分泌されません。

安静時唾液とは、睡眠中など特に刺激がない状態で分泌される唾液を指します。一方、刺激唾液は、食べ物を噛んだり、酸味や甘味を感じたりしたときに分泌される唾液です。

この2種類の唾液は成分にも違いがあります。刺激唾液はサラサラとした性質で流動性が高く、食べ物を口に取り込みやすくしたり、不要なものを排出したりするのに適しています。また、お口の中を酸から守る働きにも優れています。それに対して安静時唾液は粘液性が高く、ムチンやタンパク質がより多く含まれており、異なる役割を果たしています。

起床後すぐに磨くメリットとデメリット

起床後すぐの歯磨きには、このようなメリットがあります。

  • 夜の間に繁殖した細菌をすぐに取り除ける
  • 口臭を抑えて気持ちよく朝を迎えられる
  • 出勤前や通学前に人と会うときに自信が持てる

一方で歯磨きを起床後すぐに行うデメリットもあります。

  • 歯磨き直後にすぐ朝食をとると、歯磨き粉の味が食事に影響する
  • 強い研磨剤入りの歯磨き粉を使うと、空腹時の歯に刺激を与える可能性がある

つまり、口臭予防を重視するなら起床後すぐが効果的ですが、食事との兼ね合いも考える必要があります。

朝食後に磨くメリットとデメリット

朝食後に歯を磨くメリットは、食べかすや糖質、歯垢(プラーク)ををしっかり取り除ける点にあります。これにより、虫歯や歯周病のリスクを減らすことができます。しかし、デメリットもあります。

  • 食後すぐに磨くと、酸によって柔らかくなった歯の表面のエナメル質を傷つける可能性がある
  • 朝の忙しい時間に後回しにしてしまい、結局歯を磨き忘れることもある

歯科医師の考えによっては、食後30分程度経ってから磨くのが理想とすすめることがあります。これはお口の中の酸が中和され、歯が守られる状態になってから磨くのが効果的と考えるためです。

専門家がすすめる朝の歯磨きのベストタイミング

いずれも比べてみると、起床後すぐなのか、朝食後なのか、どちらが正しいのか迷う方も多いでしょう。総合的にまとめてみます。

  • 起床後すぐ:口臭予防、口内リフレッシュに効果的
  • 朝食後:虫歯や歯周病予防に効果的だが食後30分後が望ましい

そのため、起床後すぐにうがいや軽く歯磨きを行い、朝食後30分程度して本格的に歯磨きという二段階の歯磨きが理想的です。

忙しい朝でも実践できる歯磨きの工夫

毎朝二回歯を磨き、朝食後は30分待ってから歯を磨くのは、現実的には難しいということも多いでしょう。そんな時は、こんな方法を試してみてください。

  • 起床後はうがいだけ行い、口腔内の細菌を減らして外に出し、朝食後に磨く
  • 起床後に磨き、朝食直後は水やお茶で口をすすぎ酸を洗い流す
  • 出かける直前に短時間でもブラッシングを行う
  • 電動歯ブラシを活用し、短時間でも効率よく磨く

完璧に行おうとすると継続が難しいことがありますが、できる範囲で歯をケアするようにすると習慣化につながります。

正しい歯磨き方法で効果を最大化するポイント

朝の歯磨きの効果を高めるためには、タイミングだけでなく磨き方も大切です。

1. 力の入れ方

歯磨きは強くこするほどきれいになるという誤解を持っている人が多いですが、力を入れすぎると歯ぐきを傷つけたり、歯の表面のエナメル質に小さな傷ができ、摩耗してしまいます。150g〜200g程度の圧力を心掛けましょう。

2. 歯ブラシの持ち方

鉛筆を持つような持ち方のペングリップが力をかけ過ぎずおすすめです。握りしめるように持つと無意識に力が入りすぎるため、優しい圧でコントロールできる持ち方を意識しましょう。

3. 歯ブラシの角度

歯と歯ぐきの境目に対して45度にあてるのが理想的です。毛先を歯の表面のみでなく、歯ぐきの溝の歯周ポケットに軽く入り込ませることで、細菌の温床になりやすい部分を清掃できます。ただし、力をかけ過ぎて歯茎を磨くと歯茎が下がり、知覚過敏になりますので注意してください。

4. 動かし方

大きくゴシゴシではなく、小刻みに5〜10mmほど動かすのが基本です。上の歯は下向きに、下の歯は上向きに軽くストロークして、歯垢をかき出すように磨きます。特に歯と歯の間、奥歯のかみ合わせ部分は磨き残しやすいので丁寧に行いましょう。

5. 磨く順番を決める

磨き残しを防ぐためには、毎回同じ順番で磨くことが効果的です。

  1. 上の奥歯の外側 → 前歯の外側 → 反対側の奥歯の外側
  2. 上の奥歯の内側 → 前歯の内側 → 反対側の奥歯の内側
  3. 下の歯も同じ順番で外側→内側
  4. 最後に噛み合わせる面を磨く

このルーティンを習慣化すれば、磨き残しがぐっと減ります。

6. 歯ブラシ以外の補助道具

歯ブラシのみでは60〜70%程度しか歯垢を落とせないといわれています。そのため補助清掃具も取り入れると理想的です。

  • デンタルフロス:歯に沿って入れる歯肉の細かい汚れや歯と歯の間の汚れを除去
  • 歯間ブラシ:歯と歯の隙間が広い場合に有効
  • マウスウォッシュ:殺菌効果や口臭予防にプラス

7. 磨く時間

1回の歯磨きは 最低3~5分程度が目安です。ながら磨きではなく、鏡を見ながら丁寧に行うと精度が上がります。

適切な歯磨きチェックリスト

基本の姿勢


ブラシのあて方


動かし方



磨く順番

補助清掃具





時間と環境


まとめ


自分に合った朝の歯磨きのタイミングを見つけることが大切で、正解は一つではありません。起床後すぐ磨く人も、朝食後に磨く人も、それぞれにメリットがあります。口臭を防ぎたい人は起床後すぐに歯磨きを行い、虫歯予防を優先したい人は朝食を食べて30分後に行い、どちらも重視したい人は起床後にうがいをして口腔内の細菌を出したうえで、朝食後の歯磨きを行いましょう。自分に合ったスタイルを見つけて、歯を清潔に健康的に長持ちさせるために、無理なく磨くよう続けていくことが重要です。

この記事の監修者

医療法人真摯会
西宮クローバー歯科・矯正歯科 院長
廣石 勝也
朝日大学歯学部卒業。大阪歯科大学総合診療科臨床研修終了。国際口腔インプラント学会会員。

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