インプラント

ブリッジかインプラントか悩む方への比較ガイド

ブリッジかインプラントか、どちらにしようかと悩むという話を聞いたことがあります。歯を失った場合の治療法として挙げられますが、どちらがご自身の希望により近いものかを知るのが重要です。ブリッジやインプラントの特徴、比較ポイントを含めてご紹介します。

ブリッジ・インプラント・入れ歯という治療法

虫歯や歯周病、事故などで歯を失った部分には、義歯治療を行う必要があります。義歯治療を行わなければ、空いているスペースに隣の歯が倒れてきて、噛み合わせが悪くなり、細菌感染のリスクが高まるからです。義歯治療法として挙げられるのが、入れ歯(義歯)、ブリッジ、インプラントです。

入れ歯は見た目や装着感が気になるという理由で選択肢から外し、ブリッジかインプラントの治療法で迷われることが多いです。ブリッジかインプラントかについては、見た目や噛み心地のみではなく、周囲の歯への影響、治療期間、費用、骨量や全身疾患などといった観点も含めて選択しましょう。それぞれの構造や特徴を把握してから、比較するべきです。

ブリッジとは何?構造や適応、特徴

ブリッジとは、失った歯の両隣の歯を支え(支台歯)として使い、その間を橋渡しするように連結した人工歯を設置する方法です。1本~数本の欠損という比較的局所であることと、支台となる隣接歯が健康で強度的にも問題なければ適用されます。

  1. 失った歯の両隣の歯を削る
  2. 削った歯を支台とし、複数本の連結した人工歯をその上に架け渡す
  3. 固定された構造で取り外しの必要がない

ブリッジの特徴

  • 比較的治療期間が短い
  • 外科手術を伴わず、比較的侵襲が小さい
  • 保険適用できるケースがある
  • 見た目をある程度整えられる
  • 固定式で取り外し不要

支えとなる歯を削らなければならず、その歯に負荷をかける点が後述するデメリットになります。

インプラントとは何?構造や適応、特徴

インプラントは、失った歯の根の部分を人工的に埋入し、人工歯根で人工歯を支える方法です。一本のインプラントで欠損歯一本を代替できる構造を持ち、隣接歯に頼ることなく独立して支持できます。

  1. 顎骨にインプラント体(人工歯根)を外科手術で埋入
  2. 骨と人工歯根が結合(オッセオインテグレーション)するのを待つ
  3. 結合確認後、人工歯根に連結部分のアバットメントを入れ、上部に人工歯を固定

インプラントの特徴

  • 自然な見た目で噛み心地も近づけやすい
  • 隣接する歯を削る必要がない
  • 顎骨に直接刺激が伝わるので、骨の退縮を抑えやすい
  • 長期的に安定すれば長く使える可能性が高い

外科手術を伴うことや治療期間の長さ、高い費用などのデメリットがあることと、糖尿病、骨粗しょう症、血液疾患などの全身疾患がある方では、適用条件やリスクを慎重に検討しなければなりません。

ブリッジとインプラントのメリット比較

では、ブリッジvsインプラントという観点で、それぞれのメリットを比べてみましょう。

ブリッジのメリット

外科手術が不要なため、通院回数や期間を抑えやすく、治療期間が比較的短い
保険適用内であれば患者さんの自己負担費用が抑えられ、初期コストが低め
技術的に導入しやすく治療手順がシンプルで心理的な負担が少なめ
自由診療では白い材料を選ぶなど審美性を上げられ、見た目の改善の自由度が高い

インプラントのメリット

隣の歯を削らずに済むため、歯の健康にダメージを与えない
天然歯に近い咬合力を再現し、咀嚼で顎骨に刺激を与えられ、吸収を抑えて維持が可能
適切なケアをすれば、長期使用が可能とされる安定性
人工歯根の独立で修理交換が部分的にでき、メンテナンスがしやすい

人によってメリットは異なりますが、他の歯を守ることが可能で長期安定性という観点では、インプラントに軍配が上がります。

ブリッジとインプラントのデメリット比較

メリットばかりの治療法はありません。ブリッジvsインプラントのデメリットについて比べてみましょう。

ブリッジのデメリット

支台歯を大きく削るため咬合力が負荷となり、将来的に支台歯の破損などのリスクが高い
歯根がないため刺激が伝わらず、顎骨が痩せて退縮する
ブリッジ全体が劣化すると再治療の際に隣接歯も影響を受け、耐久性や寿命にはやや劣る
保険適用の材料では色調や形態に限りがあり、見た目やフィット感にやや制限がある
壊れた時に再補修が複雑な場合もあり、破損時の対応がやや難しい

インプラントのデメリット

外科手術を伴うため、感染、出血、神経障害などのリスクが存在する
骨との結合期間を待つ必要があり、数ヶ月~半年以上かかり治療期間が長い
殆どの場合自由診療で、保険適用外のため自己負担が高額である
骨量不足、全身疾患、喫煙や飲酒習慣、口腔衛生状態により適用できない可能性
定期的なメインテナンスが不可欠で、怠ると歯周病のようなインプラント周囲炎にかかるリスクが高い

人によってデメリットも異なりますが、高額な費用、全身疾患や習慣によっては治療が難しいいう観点では、ブリッジに軍配が上がります。

長期維持、費用、手術リスクなど

実際にブリッジかインプラントかを判断する際に重視すべき比較ポイントをまとめました。

比較項目 ブリッジ インプラント
初期費用 保険が効く場合は比較的抑えられる 自由診療になることが多く、費用は高め
治療期間 比較的短く済む 通常数回~数か月にわたる
侵襲性 手術不要で身体的な負荷は小さい 外科手術を伴うため、身体的な負荷がある
隣接歯への影響 削る必要があるため、他歯に負荷 隣石歯を削らないため影響が少ない
顎骨への維持 刺激がないため骨吸収が進みやすい 骨に刺激が伝わるため、骨量維持に有利
長期維持性 再治療リスクがあり、隣在歯が影響を受けやすい 良好なケア下では長期間安定しやすい
適応性 支台歯が健康でないと難しい 骨量や全身状態により制限される場合あり
見た目や機能性 保険素材では制約あり 審美性、機能性ともに優れる可能性あり
リスク 支台歯への負荷、隣在歯劣化 手術合併症、インプラント周囲炎など

10年後の生存率として、インプラントはおおむね96%程度、保険適用のブリッジは 70%前後とする報告もあります。ただし、これはあくまで統計的な数値であり、個人の条件によって大きく変わることは念頭に置くようにしましょう。

あなたに合う治療とは?

実際にブリッジかインプラントかを選ぶ際には、これらの点に留意しましょう。

健康状態や骨などの条件

  • 顎骨の厚みや高さが十分あるか
  • 骨質の硬さや密度は良好か
  • 糖尿病、骨粗しょう症、心疾患などの全身疾患がないか
  • 喫煙習慣、飲酒習慣、口腔衛生状態は問題ないか

骨量が不足している場合は骨移植やGBRなどの骨造成が必要となり、インプラントへの治療時間が長くなったり、難しくなることもあります。

支台歯の状態

  • 隣接歯がすでに治療済みの歯か、支える能力が弱いかどうか
  • 削ることで支台歯が将来的に弱くなる可能性があるか

支台歯となる歯の状態が悪ければ、ブリッジを選ぶリスクが高くなります。

経済的な負担や保険適用の可否

  • 自己負担の費用を抑えたいか
  • 保険適用が使える範囲かどうか
  • 長期的なメインテナンス費用も含め考えているか

治療期間や心理的負担

  • 長期の通院や手術に耐えられるか
  • 手術への恐怖や心理的抵抗感があるか
  • 期間を早くなるべく治したいなどの希望があるか

将来性や耐久性を重視か否か

  • 将来的に長く使いたいか
  • 再治療の可能性を少しでも下げたいか
  • 他の歯をできる限り守りたいか

多少の費用を出してでも将来性を重視したい方にはインプラントが適し、コストや手軽さを重視したい方にはブリッジが適していると言えるかもしれません。

歯科医師との対話で確認すべきポイント

最終的にはあなたのお口の中の状態を把握している歯科医師との相談が不可欠です。確認しておきたいポイントを挙げておきましょう。

CT及びレントゲンなどの顎骨や骨量、骨質の診断結果
隣接歯や支台歯の健康状態と強度
治療のステップやスケジュール、通院回数
初期費用やメインテナンス費用含む金額の見積もり
インプラントにおける手術リスクや合併症リスク
術後ケアやメインテナンスの方法と頻度
保証制度や再治療への対応
色や形、見映えなどの審美性に対する提案
他の治療方法との比較
万が一の失敗や予後不良時への対応方針

治療法のメリットとデメリットを知り、ご自身が納得できる治療を選択することが大切です。

まとめ

ブリッジvsインプラントは、単純な優劣ではなく患者さんの口腔状態、ライフスタイル、価値観によって最適な治療法が異なります。ブリッジは比較的短期間で低侵襲、経済的というメリットがある反面、隣の歯を削る必要があり、支台歯への負荷や骨吸収などのデメリットが懸念されます。インプラントは自然に近い噛み心地や長期安定性、他歯への影響軽減といった強みがあるものの、外科手術や料金の高さ、適応条件のハードルがある点を理解しておく必要があります。悩んだときには比較ポイントをもとに、歯科医師と丁寧に相談し、ご自身の希望と条件を踏まえたうえで最終判断をするのが良いでしょう。

この記事の監修者

医療法人真摯会
西宮クローバー歯科・矯正歯科 院長
廣石 勝也
朝日大学歯学部卒業。大阪歯科大学総合診療科臨床研修終了。国際口腔インプラント学会会員。

▶プロフィールを見る