虫歯

高齢者の虫歯リスク 虫歯が出来やすい場所と予防

高齢者の虫歯リスク 虫歯が出来やすい場所と予防

高齢者の虫歯は、若年層とは異なる特徴とリスクがあります。シニアになると加齢によって歯と歯茎の健康状態が変化し、自然と虫歯の出来やすい状態になっていることが多いです。

特に問題となるのが根面虫歯、歯間虫歯、そして奥歯の溝の虫歯です。これらの部分は特に注意が必要で、適切なケアによって虫歯を防ぐことが出来ます。

高齢者が虫歯になりやすい場所

高齢者の虫歯は若年層とは異なり、特定の場所で発生しやすい特徴があります。特に以下の3か所に多く見られます。

  1. 根面虫歯・・歯茎の後退によって歯の根が露出し、そこが虫歯になりやすくなります
  2. 歯間虫歯・・歯が重なって歯ブラシが届きにくい場所が増えることで発生しやすくなります
  3. 奥歯の溝・・奥歯の細かい溝に汚れがたまりやすく、それが虫歯の原因となることがあります

それぞれご説明します。

1. 根面虫歯

根面虫歯は、高齢者に特に多く見られる虫歯のタイプです。これは、年齢とともに歯茎が後退し、普段は歯茎に覆われている歯の根の部分が歯茎の上に露出することで起こります。

歯の根の部分はエナメル質で保護されていないため、酸による脱灰が起きやすく、虫歯になりやすいという特徴があります。根面虫歯の予防には、フッ素入りの歯磨き粉の使用や、定期的な歯科健診が推奨され、歯周病にならないように気を付ける必要があります。

2. 歯間部分

高齢者の場合、歯と歯の間、特に奥歯の間に虫歯ができやすい傾向にあります。これは、歯間ブラシやデンタルフロスを使った清掃が十分に行われておらず、歯に汚れが付いたままになっているためです。

また、年齢と共に歯並びが変化して、歯と歯の間に隙間が出来たり、逆に歯が重なってきたりして、以前よりも食べ物のカスが挟まりやすいことも原因の一つになっています。歯ブラシだけでなく歯間ブラシやフロスを使っての歯磨きは、これらの場所の虫歯を防ぐためにとても大切です。

3. 奥歯の溝

高齢者は、奥歯の深い溝に食べ物が詰まりやすく、そこから虫歯が発生することがあります。若いころに比べて唾液の分泌量が減少することも、奥歯の溝の虫歯を悪化させます。

唾液には口内の洗浄作用があるため、その量が減ると食べ物のカスを自然に洗い流すことが難しくなります。奥歯の溝の虫歯を防ぐためには、定期的な歯科健診でのフッ素塗布や、必要に応じてシーラントの施術が効果的です。

これらの場所は特に注意が必要で、毎日のていねいな歯磨きと定期健診によって虫歯のリスクを減らすことが可能です。

虫歯になりやすい場所

根面虫歯とは何か?

根面虫歯は、根面う蝕とも呼ばれ、高齢者に特に多く見られる虫歯です。歯茎が下がって歯の根の部分が露出することによって発生します。

根面虫歯の原因

根面虫歯は、主に年齢とともに歯茎が下がること(歯周病などによる歯茎の後退)によって引き起こされます。歯茎が後退すると、普段は歯茎に覆われて保護されている歯の根の部分が歯茎の上に露出します。

歯の根の部分はエナメル質よりも軟らかいセメント質で覆われているため、エナメル質に比べて酸による脱灰が起こりやすく、虫歯になりやすいのです。

根面虫歯の特徴

  • 歯の根は柔らかいため虫歯になりやすい・・根面はエナメル質に覆われた歯冠に比べて酸に弱く、脱灰(酸によるミネラルの溶出)が進行しやすい。
  • 発見が遅れがち・・根面虫歯は歯茎の近くで発生するため、初期段階では自覚症状が少なく、見つけにくいことがあります。
  • 進行速度・・根面の虫歯は進行速度が速く、治療せずに放置すると重度の虫歯を引き起こすことがあります。

根面虫歯の予防方法

洗面台

1. 正しい方法での歯磨き

歯ブラシを軽い力で歯に当てて、歯茎が後退して露出した根面を丁寧に磨くことが重要です。強い力で歯ブラシでゴシゴシすると、根面をすり減らして知覚過敏を越したり、歯茎をさらに傷つけて退縮させる原因にもなりますので注意が必要です。

2. フッ素使用

フッ素入りの歯磨き粉を使用することで、歯の再石灰化を助け、虫歯のリスクを減少させることができます。

3. 定期的な歯科健診

定期的な歯科健診により、初期の根面虫歯を早期に発見し、治療を行うことができます。

4. 歯科医院でのクリーニング

歯科医院でのクリーニングを定期的に受けることで、歯垢や歯石がたまるのを防ぎ、根面虫歯のリスクを低減できます。

5. 食生活の改善

歯を守るために酸性の食べ物や飲み物の摂取を控え、バランスの取れた食事を心がけることも重要です。

根面虫歯は予防が特に重要です。日常生活の中でていねいな歯磨きを心がけ、定期的に歯科健診を受けることで、歯の健康を保つことが出来ます。

歯間部の虫歯予防

歯と歯の間は特に虫歯になりやすい場所です。毎日の歯磨きに加えて、デンタルフロスや歯間ブラシを使うことが大切です。これにより、歯ブラシでは届かない細部のプラークを除去でき、虫歯のリスクを大きく減らします。

歯間部の虫歯予防の重要性

歯間部は歯ブラシの毛先が届きにくいため、食べ物の残りカスや歯垢が蓄積しやすく、それが虫歯や歯周病の原因になります。歯と歯の間の汚れは歯ブラシだけでは落としきれませんので、フロスや歯間ブラシを使います。

歯間部の虫歯予防の方法

1. デンタルフロスの使用

デンタルフロスを歯と歯の間に通すことを習慣づけると、歯と歯の間にあるプラークを効果的に取り除くことができます。毎日の歯磨きの時にフロスも追加で使用し、フロスを歯間に優しく挿入して、歯と歯の間や歯の面に沿って上下に動かして糸で汚れを絡め取ります。

2. 歯間ブラシの使用

歯間の隙間が広い場合や、歯と歯茎の間に三角の隙間がある場合や、ブリッジや矯正器具がある場合は、デンタルフロスよりも歯間ブラシの方が効果的です。適切なサイズの歯間ブラシを選び、優しく歯間に挿入し、歯垢と食べ物のカスを除去します。

歯間ブラシが大きすぎると歯茎の退縮の原因になりますので、歯茎の状態にあったサイズは歯科衛生士にお尋ねください。また、歯茎に強く当てすぎた場合も歯茎の退縮が起こる場合がありますので注意しましょう。

3. 定期的な歯科健診

定期的な歯科健診では、歯科衛生士によるクリーニングが行われ、普段の歯磨きでの磨き残しや歯石を除去することが出来ます。また、歯科衛生士から正しい歯磨きの指導を受けることもできます。

4. 食生活の見直し

食事後は口をすすぐか、歯磨きをすることが虫歯予防に繋がります。砂糖の多い食品や飲料の摂取は避けましょう。また、酸性の食品や飲料も歯のエナメル質を弱めるため、摂取も控えめにします。

これらの方法を組み合わせることで、歯間部の虫歯予防に効果があります。虫歯予防のためには毎日のケアが重要であり、特に夜の最後の歯磨きによって1日の汚れを除去することは、虫歯のリスクを減らします。

奥歯の溝の虫歯を防ぐ方法

奥歯の溝は、細かくて深いため、歯ブラシの毛先が届きにくく、清掃するのが難しい場所です。食べ物のカスや歯垢もたまりやすく、子供や若者だけでなく、全年齢層で虫歯になりやすい部分です。

1. シーラントの利用

奥歯の溝にはシーラントと呼ばれるレジン(歯科用プラスチック)の保護コーティングを施すことが一般的な予防策です。シーラントは、歯の溝を物理的に封鎖して、食べ物の残りやプラークの蓄積を防ぎます。

この処置は簡単で、数分で完了し、効果は数年間持続します。定期的な歯科健診でシーラントがはがれていないかをチェックし、必要に応じて再び施術することが予防につながります。

2. 正しい方法での歯磨き

奥歯の溝の部分もしっかりとブラッシングすることが重要です。ブラシのヘッドが小さめの歯ブラシを使用し、歯のすべての面がブラシの毛先で磨かれるようにします。電動歯ブラシは、一定の力で効率的に歯垢を除去できるため、特におすすめです。

3. フッ素製品の使用

フッ素は歯のエナメル質を強化し、脱灰を防ぎます。フッ素入りの歯磨き粉の使用や、歯科医院でのフッ素塗布は、奥歯の溝の虫歯予防に効果的です。日常的にフッ素を使用することで、細菌や酸に対する歯の抵抗力を高め、虫歯のリスクを減らします。

4. 定期的な歯科健診

定期的な歯科健診を受けることで、初期の虫歯を早期に発見し、適切な治療を行うことができます。また、歯科医院でクリーニングを受けることによって、普段の歯磨きでは取り除けない歯垢や歯石を取り除き、虫歯になるリスクをさらに減らすことができます。

5. 食生活の管理

食べ物が歯に付着する時間を短縮することが虫歯予防につながります。食後は水で口をすすぐか、歯を磨くようにしましょう。特に糖分の高い食品や飲料、粘性のあるスナックは避けるように心がけると良いです。

これらの方法を組み合わせて行うことで、奥歯の溝の虫歯のリスクを大幅に減少させることが出来ます。

まとめ

高齢者の虫歯は、根面虫歯、歯間虫歯、奥歯の溝の虫歯など、特にリスクの高い部位への注意が必要です。虫歯予防のためには毎日のデンタルケアと定期的な歯科健診が重要なポイントです。

加齢による歯茎の退縮や歯並びの変化、歯周病など、高齢者に特徴的な歯のトラブルから歯を守るためには、正しい方法での歯磨き、フッ素の使用、歯科医院でのクリーニング、そして健康的な食生活などが効果的です。

この記事の監修者

医療法人真摯会
西宮クローバー歯科・矯正歯科 院長
廣石 勝也
朝日大学歯学部卒業。大阪歯科大学総合診療科臨床研修終了。国際口腔インプラント学会会員。

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