歯茎に腫れや痛みがある場合、虫歯や歯周病からお口に直接の原因がないものなど、様々な原因が考えられます。
症状によっては重大なトラブルが潜んでいる場合もあり、早急に歯科医院で診察した方がよいものもあります。
こちらでは歯茎が腫れる、痛くなる原因と対処法、治療法、歯茎の腫れを予防するための日常の習慣などをご紹介します。
歯茎が腫れた時に考えられる原因は主に7つあります。
食いしばり、歯ぎしり
歯と骨の間には歯根膜がありますが、食いしばりや歯ぎしりなどの癖があると歯根膜に炎症が起き、歯茎に痛みや腫れが生じることがあります。
また、食いしばりや歯ぎしりで歯が削れることにより痛みが起きている可能性もあります。
智歯周囲炎(親知らず)
親知らずは智歯とも呼ばれ、智歯周囲炎とは親知らずが原因で起こる歯肉・歯周組織の炎症のことです。
最近の日本人は顎が小さいため歯が正しい位置に生えてこないことが多く、うまく生えてこなかった親知らずは一部が露出していて残りの部分は歯茎に覆われているため、歯と歯茎の間に袋状の隙間が出来、そこに細菌や食べかすが入り炎症を起こします。
これが智歯周囲炎です。
親知らずが生えかけの時や斜めに生えている時は特に汚れが溜まりやすいため、炎症が起こりやすくなります。
ひどい場合は痛み、腫れは歯茎だけにとどまらず、顔までが腫れることもあります。
口内炎、やけど
口内炎が原因で歯茎に痛みを感じることもあります。
口内炎には以下のようなものがあります。
アフタ性口内炎…最も一般的で白っぽい円形の腫瘍が出来ます。免疫力の低下やストレス、疲労などが原因です。
ヘルペス性口内炎…ウイルスや細菌の増殖が原因で出来る口内炎で、多数の小さな水疱が出来るのが特徴です。
カンジダ性口内炎…真菌が原因で出来る口内炎。白くて軟らかい苔状の斑点ができ、赤くただれます。
外傷性口内炎…外的刺激により粘膜が傷つき、そこに細菌が繁殖して起こる口内炎です。
ヒリヒリとした痛みがある場合はやけどの可能性もあります。
虫歯
進行した重度の虫歯の場合、歯の根に炎症が起きて膿が溜まり、歯茎が腫れてズキズキとした痛みを感じることがあります。
歯茎の腫れだけにとどまらず、顔の腫れや発熱が起こることもあります。
歯周病
歯周病は、歯と歯茎の間の歯周ポケットに歯垢や歯石などが溜まって細菌感染を引き起こす病気です。歯周病になると歯茎に炎症が起きます。
症状が進行するまで自覚症状がないのが特徴ですが、進行すると歯茎の腫れや発赤、痛みを引き起こす他、口臭や膿み、歯のぐらつきが起こるようになります。
最終的には歯が抜け落ちてしまいます。
根尖性歯周炎
根尖性歯周炎の場合は、原因は歯茎ではなく歯にあります。
歯の神経が壊死したまま放置すると、歯の根に炎症が起き、膿が溜まり、根尖性歯周炎を引き起こすことがあります。
歯の根の先の歯茎が腫れるほか、普段から噛むと痛かったり、膿が出たりという症状が出ます。
放置すると副鼻腔炎や顔の腫れを引き起こすこともあります。
歯根破折
歯根破折は歯の根にヒビが入っている状態で、神経を抜いた歯の歯質が弱ったことが原因のひとつです。
神経を抜いた歯が破折した場合は痛みを感じにくいため、発見が遅れることがあります。
歯茎が赤く腫れたり膿が出るほか、噛むと違和感があるなどの症状が出るのが特徴です。
ストレスや疲労など
ストレスや疲労が蓄積すると免疫力が落ちることで歯茎が細菌に感染しやすくなるため、一時的に歯茎が腫れることがあります。
その場合、十分に休息をとり、お口を清潔に保つことで改善することがあります。
良性腫瘍、悪性腫瘍
▲ 歯肉がんの例
白いできもの、しこりがある口内炎などは良性腫瘍の可能性があります。
良性腫瘍は移動せずその場に留まるのが特徴です。
歯茎に出来る悪性腫瘍は歯肉がんと呼ばれ、口腔がんの一種です。
良性腫瘍と違い転移しながら増えていくのが特徴で、進行が早く、できものが大きくなります。
歯茎が痛くなったらそのまま放置せず、なるべく早く歯医者を受診するようにしましょう。
とは言っても休日だったり夜間だったりと、すぐに歯医者に行けない時にご自宅でも出来る応急処置をご紹介します。
患部を冷やす
歯が痛い時は、アイスノンや冷えピタ、氷嚢や冷やしたタオル等
を使い、頬から間接的に患部を冷やすことにより、痛みを和らげることが出来ます。
患部を冷やすことで血流を抑えられるので、痛みを抑えることが出来ます。
ただし、冷やしすぎると血流が滞り薬の効果が出にくくなったり、回復に時間がかかったりしてしまうことがあるので注意しましょう。
お口の中を清潔にする
歯茎の腫れの原因として、食べかすなどが詰まって神経を圧迫したり、炎症の原因になっている可能性があります。
常温の水でお口を濯いだり、ブラッシングや歯間ブラシ、デンタルフロスで優しく汚れを取り除きます。
デンタルリンスやうがい薬で消毒するのもおすすめです 。
痛みが強い時は痛み止めを飲む
歯茎に痛みがある時は市販の鎮痛剤を飲んで痛みを凌ぐ方法もあります。
液体カプセルタイプは錠剤に比べて効果が現れるのが早いと言われています。
安静にする
歯茎の腫れは疲れていたり寝不足など、体調が悪い時に生じます。なるべく安静にして休む、体力を回復させるようにしましょう。
毎日の生活の中で出来る、歯茎の腫れを予防するセルフケアをご紹介します。
歯ブラシと歯磨きの仕方を見直す
歯ブラシのヘッドが大きすぎると磨き残しが増えます。上の前歯2本程度の大きさが目安です。
毎日のブラッシングで汚れをしっかりと落とすと歯周病の予防に繋がります。
自己流のブラッシングでは磨き残しが出来てしまう可能性があるので、歯科医院で歯磨き指導を受けて正しい歯磨き方法を身に着けましょう。
デンタルフロスや歯間ブラシを活用する
歯ブラシだけでは歯と歯の間の汚れをきれいに取り除くことが出来ません。
歯と歯の間には汚れが溜まりやすく、そこから歯周病がはじまることも多いため、デンタルフロスや歯間ブラシを使って歯と歯の間の汚れも丁寧に除去するようにしましょう。
ストレスを溜めないようにする
ストレスや疲労の蓄積は歯茎の腫れの原因になるため、生活習慣を見直し、ストレスが溜まらないようにしましょう。
バランスの良い食事を摂る
栄養不足になると免疫力が落ち、歯茎の腫れを引き起こします。バランスのとれた食事で色々な栄養素を摂るようにしましょう。
また、腸内環境が乱れはと免疫力低下の原因になることがあるため、乳酸菌などを意識的に摂るようにしましょう。
歯科医院でクリーニングしてもらう
歯科医院でのクリーニングではセルフケアでは落としきれない歯垢や歯石を取り除くことが出来るため、定期的に歯科医院でクリーニングを受けましょう。
虫歯や歯周病を早い段階で発見出来たり、歯磨き指導が受けられる場合があるのもメリットです。
⇒ 定期検診の詳細へ
歯茎をセルフチェックする
歯茎の状態をご自身で確認することも大切です。歯磨きの時に歯茎の色や状態も合わせて確認するのがおすすめです。
もし歯茎が腫れていたら、丁寧にブラッシングすることで腫れがひどくなる前に症状を改善することも出来ます。
歯茎が腫れた時はなるべく早く歯医者を受診しましょう。
以下に歯茎が腫れた時に歯医者で行われる主な治療についてご説明します。
歯周病
初期であれば歯磨きを正しく行うことで歯周病を予防、改善することが可能です。
しかし症状が進行してしまうとセルフケアだけでは改善出来ないため、 歯科医院での治療が必要です。
歯周病治療のメインはプラークコントロールです。
プラークコントロールのために歯科医院では歯石や歯垢の除去を行い、歯磨き指導にて正しいブラッシングを身に着けていただきます。
重度の場合は外科的処置を行うことがあります。
根尖性歯周炎
歯根に溜まっている膿みを出し、清掃、消毒します。無菌状態になったら薬剤を充填し、詰め物・被せ物を取り付けます。
根尖性歯周炎は放置していても自然に治ることはなく、症状が進行すると抜歯に至る恐れがあります。
症状が見られたら出来るだけ早く歯医者を受診するようにしましょう。
歯根破折
歯根破折の場合は割れたところが浅い場合と深い場合で治療法が異なります。
深い位置で割れた場合
深い位置で割れた場合は抜歯になる可能性が高く、抜歯後は入れ歯、インプラント、ブリッジなどの治療を行います。
浅い位置で割れた場合
歯が割れた位置が浅かった場合は抜歯せずにすむことがあります。
歯茎を下げ歯を露出させ、歯に被せ物をする「クラウンレンクスニング(歯根延長術)」
割れて残った歯を引っ張りあげて露出させる「エクストルージョン(歯牙挺出術)」
などの治療法があります。
智歯周囲炎
炎症を起こしている歯茎を消毒し、鎮痛剤や抗生剤などで炎症を抑えます。
親知らずが真っすぐ生える見込みがある場合はしっかりブラッシングをして歯を残せることがあります。
虫歯が出来ている場合、何度も腫れている場合、横向きや斜めに生えてきている場合は抜歯になることが多いです。
食いしばり、歯ぎしり
マウスピースを使用します。(スプリント療法)
就寝時にマウスピースを装着することで歯や顎への負担を軽減することが出来ます。